シリーズ-国のかたちを考える/三井不動産代表取締役副社長執行役員・北原義一氏

 ◇インフラ更新、付加価値生み資金調達
 日本の都市計画・開発や現在の東京都心部の原型を方向付けたのは、1923年に起こった関東大震災からの復興を先導した政治家・医師の後藤新平といわれる。人々が安全・安心に暮らす幸せな社会の構築を目指し、「国家百年の計」を考えて推進した後藤の街づくりのDNAはその後の日本に受け継がれていった。
 あらゆる財やサービスが不足していた戦後の日本は大量生産・大量消費時代のさなか、用途によってゾーニングする画一的な都市計画・開発が進められた。当時の旺盛な施設需要に対して効率的に対応するには正しく優れた選択だったが、低成長時代に入り超高齢化社会を迎えて需要が十二分に満たされた現在、方針転換を迫られている。
 大量生産・大量消費時代の次に到来するのは、デジタル革命や第4次産業革命の進展によって、究極の多様性を受容する「個の時代」だ。そうなれば、現在のあらゆる産業が採用している大量生産に適したプロダクトアウト型の事業や組織から、多様な需要に応える新たな仕組みへの改変が必要となる。
 高度経済成長期に集中的に整備されたインフラの更新も重要な課題だ。野村証券の調査によると、日本の公共インフラの不動産資産は約700兆円に上るという。この再構築には少なく見積もっても1500兆~2000兆円程度を要するとみている。財政収支の立て直しにめどが立たない中では、民間資金を投入するしかない。従来の公共施設・インフラに新たな付加価値を生みだし、キャッシュフローを付けて国内外から資金を呼び込むことが求められるが、それにはデベロッパーの知恵と創造力が不可欠だ。国内外から長期的な資金を集める上で、金融セクターが果たす役割も大きい。
 インフラの再構築では建設業の活躍に最も期待している。日本の建設業は世界一だと思っているが、引き続きものづくりに対して飽くなき技術追求をしてもらいたい。加えて業界の強い現場力も重要だ。その現場力を支える真のプロフェッショナルの養成や師弟のような信頼関係の維持を、人材育成によって実現してほしい。
 幸せな社会の構築に向けて、今後の街づくりで求められるのは共同体の再生だ。かつて家族や地域といった共同体で成立していた相互扶助システムやシェアリングエコノミーが今、崩壊しかけている。それをIoT(モノのインターネット)など先端技術を駆使して新しい形に再現することがデベロッパーの最も重要なミッションとなる。こうした街づくりを通じて、潤いのある笑顔が絶えない豊かな社会を実現していきたい。
 (きたはら・よしかず)1957年東京都生まれ。80年3月早稲田大政治経済学部卒、三井不動産入社。2011年常務兼常務執行役員ビルディング本部長、13年取締役兼専務執行役員、17年から代表取締役副社長執行役員。

(日刊建設工業新聞様より引用)