三菱マテリアル/中国のセメント事業から撤退/烟台工場を中国企業に譲渡

 三菱マテリアルは中国のセメント事業から撤退する。1995年5月からセメント生産を行ってきた烟台三菱水泥(山東省烟台市)を、同国大手建材メーカーの関連会社に3月30日付で売却した。江蘇省連雲港市にあるセメント混合製造会社も既に閉鎖。山東省青島市のセメント混合製造会社も閉鎖する予定だ。セメント事業の海外戦略を練り直し、今後は米国に軸足を置きながら新たな需要先を開拓する。
 中国のセメント市場は世界最大の規模を持つ一方で、生産設備への過剰投資により、鉄鋼などと同様に供給過多の状況にある。深刻な大気汚染を背景に環境問題への対応も強化され、工場の稼働停止や閉鎖といった命令を政府から受けるケースも増えているという。
 烟台三菱水泥は三菱商事との共同出資で92年9月に設立。年産100万トン超の能力を持つフルプラントが95年5月に稼働を開始した。総投資額は工場竣工時に1・3億ドルと公表。2012年4月には工場排熱を利用した出力4350キロワットの発電設備も導入した。現在の生産能力は、セメントの前製品であるクリンカーベースで年間120万トン。
 セメント生産だけでなく、セメントとフライアッシュ(石炭灰)を混合して中国規格の製品を作る現地法人も三菱商事との共同出資で設立。青島三菱水泥(山東省青島市、03年4月設立)、連雲港三菱水泥(江蘇省連雲港市、04年9月設立)と合わせて3社体制で事業を展開していた。
 烟台三菱水泥の譲渡先は中国建材集団の関連会社で現在、会社登記の移転手続きを進めている。事業譲渡に伴う費用は17年3月期決算に計上。現時点で譲渡額は非公表としている。三菱マテリアルによると、烟台工場は昨年、政府から3カ月の稼働停止命令を受けた。現地企業などの最新鋭大規模工場は烟台工場に比べコスト競争力が高く、より多くの在庫を抱えることが可能で、稼働停止命令を受けても烟台工場より長く製品を出荷できる。
 供給過剰による価格競争の激化や環境問題への対応などを踏まえた稼働停止命令によって、今後、中国国内での事業展開がより厳しさを増すと判断。同国から撤退し、米国に軸足を置きながら新たな需要先を開拓する方向に経営資源を振り向けることにした。
 日本国内のセメント市場は2020年東京五輪や首都圏での大型再開発、リニア中央新幹線の建設などで中期的には一定の需要が見込める。ただ長期的には人口減少やインフラの新規整備減少などを背景に需要の先細りが懸念される。一方海外は米国でインフラの老朽化対策が急務なほか、アジアやアフリカでインフラ建設が進展するなど需要の増加が期待できる。
 同社はセメントの新規需要が見込める地域を選定し、日本からの輸出を強める方針。セメントを国内で生産せず全量輸入にかじを切ったオーストラリアなどを需要先の候補に挙げる。中国の国内セメント需給は14年実績で生産が24・7億トン、消費が24・8億トン(セメント協会・セメントハンドブック16年度版)。生産量は世界全体の約半分を占めている。

(日刊建設工業新聞様より引用)