全建/働き方改革行動憲章/経営者が率先対応、ダンピング受注排除明記

 全国建設業協会(全建)は21日の理事会で、地域建設業が働き方改革に臨むに当たっての指針となる「働き方改革行動憲章」を決めた。本部、都道府県建設業協会、会員企業の姿勢や取り組むべき施策を列記。長時間労働をなくすための職場風土の改革や就労環境整備に経営者が率先して対応するとうたった。週休2日確保や所定外労働削減に向け、短工期や低価格のダンピング受注は「厳に行わない」と明記した。
 地域建設業は新規学卒者の入職が少ない上に定着率も低く、人材確保が課題。政府は建設業にも法施行から5年の猶予を置いて時間外労働の上限規制を適用することを盛り込んだ「働き方改革実行計画」を3月に閣議決定している。
 全建はこうした現状を踏まえて対応方針を行動憲章としてまとめ、地域建設業が魅力ある産業として役割を果たすための環境整備を促す。会員に行動憲章の尊重と実情に応じた対応を求め、実施状況を毎年フォローアップする。民間を含む発注機関との意見交換の場などでアピールしていく方針だ。
 行動憲章は、「経営トップのリーダーシップの発揮」「適切な受注の確保」「下請企業や取引先の労働環境改善への配慮」など10項目で構成。適切な受注では「生産性向上は適正利潤の確保の上に成り立つ」と明記。ダンピング受注を行わず、改正公共工事品質確保促進法の趣旨が民間発注者の現場でも理解されるよう努力することを盛り込んだ。元請企業として必要な工期・経費を確保すると同時に、適切な水準の賃金の支払いなど技能労働者の処遇改善を図るよう下請企業に要請するとした。
 週休2日の確保による労働時間の短縮や、半日・時間単位の取得を含む年次有給休暇を取得しやすい環境整備を進め、「健康経営」に取り組むとした。建設キャリアアップシステムの稼働を控え、技能に応じた適切な評価と処遇確保が求められるため、適正評価に基づく適切な水準の賃金の支払いと福利厚生の実施に努めることも求めた。雇用管理や人事評価制度を改革し、多様で柔軟な働き方が選択できる環境整備の推進も必要だとした。
 《働き方改革行動憲章》
 ■経営トップのリーダーシップの発揮
 ▽経営者自らが働き方改革を主導
 ▽長時間労働を助長するような企業文化や、男女の固定的な役割分担意識等の改革を進めるとともに、行動計画や目標はPDCAサイクルの着実な実施等により、柔軟な働き方が可能となる環境整備に努める
 ■生産性向上に向けた課題と目標の共有
 ▽自社が取り組むべき課題と目標を従業員と共有し、やりがいや充実感を感じながら働き、効率的にその職責を果たせるよう改善を図る
 ▽従業員の業務の進め方・内容を改めて確認・検証し、現場の実情に即した業務の見直しや、手待ち時間の短縮(稼働率の引上げ)に向けた工程管理の工夫等を進め、業務効率の引き上げに努める。
 ■女性をはじめ多様な人材がいきいきと働ける環境の整備
 ▽女性や高齢者の活躍など、誰もが可能性・能力を最大限発揮し、多様で柔軟な働き方が選択できるよう職場環境の整備を推進
 ▽性や年齢などに関わらず、個々のライフステージに応じて、短時間勤務、在宅就業や、育児・介護休業の取得等が利用できるよう雇用管理制度や人事評価制度の改革に努める。
 ■建設現場における労働安全・衛生環境の整備
 ▽地域建設業の生産の場である建設現場の安全で快適な職場環境の整備に取り組む
 ▽協力会社等の従業員を含め、現場に働くすべての従業員が安全で気持ち良く職務にまい進できるよう、きれいな現場の実現に向け、整理整頓などに努める
 ▽トイレ・更衣室等の設置、熱中症対策、除雪待機スペースの整備等、きめ細かな労働環境の整備に努める
 ■長時間労働の抑制と年次有給休暇の取得促進
 ▽労働時間関係法令の順守とともに、週休2日の確保等による所定外労働の削減や、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備を進め、従業員の健康づくりを通じた健康経営に取り組む
 ▽ノー残業デーの導入、深夜残業の禁止、週休2日制の普及、統一土曜閉所、在宅就業の活用や、年次有給休暇の計画的な付与(半日・時間単位、リフレッシュ休暇、休日前後のプラスワン休暇の導入)、取得状況の確認・見える化等に取り組む
 ■人材育成の推進
 ▽能力開発への動機付けや、インセンティブの付与に努めるとともに、積極的に能力開発機会の確保に取り組み、従業員のキャリア形成を促進する
 ▽資格・技能手当、顕彰制度の創設や、受講費用・時間等に配慮するなど、熟練技術・技能の継承及びICT活用等に必要な新たな知識・技能の習得を推進する
 ■適切な処遇の確保
 ▽個々の従業員の職務内容、職務の成果・能力・経験等に対する適正な評価の下、適切な水準の賃金の支払いや福利厚生の実施に努める
 ▽建設キャリアアップシステム等の整備に伴い、技能に応じた適切な評価と相応の処遇の確保が求められる中で、従業員の就業形態に関わらず、従業員のやりがいにも通じる適切な処遇の確保に努める
 ■適切な受注の確保
 ▽生産性向上は、適正利潤の確保の上に成り立つものであり、適正利潤が確保できる適正な価格と、適正な工期による受注の徹底に取り組む
 ▽改正公共工事品質確保促進法の趣旨が民間発注者を含む発注現場に共通の理解となるよう努める
 ▽短工期や低価格でのいわゆるダンピング受注は、工事品質の低下はもとより、工事従事者の賃金その他の労働条件の悪化、安全対策の不徹底等につながることから、厳に行わない。
 ■下請企業や取引先の労働環境改善への配慮
 ▽下請負契約等の締結に際し、下請企業等の労働環境の改善にも元請企業として責任ある対応を行う
 ▽元請企業として、必要工期の確保、設計図書の精査、適切な現場管理とともに、法定福利費、安全経費を含む必要経費の確保に努める
 ▽下請企業に対しても適切な水準の賃金の支払、法定福利費の確実な履行等、技能労働者等の処遇改善が図られるよう必要な要請を行う
 ■行動憲章の周知・徹底
 ▽全国建設業協会、各都道府県建設業協会、会員企業は、行動憲章を最大限尊重し、地域建設業における働き方改革実現のためのさまざまな取り組みを自ら積極的に行うとともに、先進企業の好事例等の情報の共有にも努める。

(日刊建設工業新聞様より引用)