建設キャリアップシステムを語る・4/全国中小建設業協会副会長・土志田領司氏

 ◇処遇改善の起爆剤と期待/重心がどこに置かれるか注視

 --建設キャリアアップシステムの整備に、全国中小建設業協会(全中建)は一貫して慎重な対応を求めてきた。

 「会員には技能労働者を直接雇用して工事を行っている企業が多い。従業員の技量や経験だけでなく、家族構成も知っているような経営者も少なくない。現場に出入りする技能者が限られ、その能力も把握している地域建設業の経営者ほど、システムの必要性に理解を示せなかった」

 「情報を登録した技能者が他社にスカウトされてしまうと懸念している経営者もいる。それ以上に、登録を敬遠したい技能者がいるとも聞いている。労災など過去のマイナス情報までも閲覧できるようなら働かせてもらえなくなると心配しているためだ。さまざまな理由で社会保険に入らなかったり、入れなかったりしてきた技能者も存在する。それでもシステムの必要性に対する理解は会員企業の中に広がりつつある」

 --会員企業の意見をどう受け止めている。

 「現場には、表彰を受けているような技能者や下請業者に来てもらいたい。ほかの全中建の会員企業と同じように、『こういう専門職に現場に来てほしい』とまでは提案しにくいことがあったり、仕事ぶりを見て次の現場に来てもらうことをお願いしたりすることがある。技量は目で見て判断するのが前提だが、処遇の改善に役立ち、技能者や下請業者の力が分かるといったシステムのメリットについては、地域の中小建設業の元請業者として理解できる部分がある」

 「システムの整備をめぐる官民の動きが活発化した当初、必要性を感じられない会員企業は多かった。しかし、現場を担う技能者が高齢化する中で若手の入職が少なく、産業としての対応が求められている。若い担い手に『頑張れば将来はこうなれるんだよ』と言えるように、優れた技能を持っている人がしかるべき処遇を得て、地位がさらに高まり、仕事に誇りを感じられるようにしなければならない。担い手の確保につながるのなら、システムの整備は推進する必要があると考えている。処遇改善の起爆剤になってほしい」

 --課題を挙げると。

 「社会保険未加入対策が進む中で行われた国土交通省との意見交換では、いわゆる多能工を社員として雇用し、社会保険にも入っているので『(未加入労働者の入場制限など)規制の適用はあすからでも大丈夫』と表明する会員企業もあった。しかし日給ではなく月給制で雇用していくためには、仕事の閑散期をなくす発注・竣工時期の平準化が必要だ。こうした環境整備がシステムの運用でも同じように必要ではないか」

 「これからの産業政策を検討する国交省の『建設産業政策会議』に委員として参加している。議論を聞いていると、建設業は全国で仕事を行っている業者が主体という認識の委員が少なくないように感じる。建設業許可業者の約99%は資本金1億円以下が占める。軸足をどこに置くかは議論の上で大切だ。システムの整備と運用に関する要請には協力したいが、その重心が大手に傾き過ぎていないか、見ていきたい」。(土志田建設社長)

(様より引用)