東日本大震災から6年/日建連除染部会長・台和彦氏に聞く/直轄除染事業が完了

 ◇歴史に残る仕事、経験は建設活動にもプラス
 東日本大震災の東京電力福島第1原子力発電所の事故で周辺地域に飛散した放射性物質を取り除く除染事業。国が策定した計画に基づく福島県内の除染(直轄除染)が16年度末、政府目標通りにほぼ完了した。除染は福島復興の大前提。前例のない公共事業に多くの会員企業が携わった日本建設業連合会(日建連)の電力対策特別委員会除染部会の台和彦部会長(大成建設代表取締役副社長執行役員)にこれまでの取り組みを振り返ってもらった。(編集部・溝口和幸)
 ■マネジメント力問われた
 --直轄除染は、放射性物質汚染対処特別措置法(特措法)に基づき、原発に近い帰還困難区域を除く福島県内11市町村で行われた。
 「対象面積は約2・5万ヘクタールと広大で、これだけの除染工事は世界でも前例がない。どのような技術が有効か、手探りの状況から始まることになった。事故の後、内閣府の『除染モデル実証事業』などいくつかのパイロット的な除染の成果によって、効率的・効果的な方法や、作業員を放射線から守る安全確保策の一端が確認できた。ただ、本格除染はモデル事業とは異なり、対象の敷地が広大だ。大量の資機材や人的資源を的確に準備して配置するといった作業のための環境整備と、技術を改良しながら円滑に進めるマネジメント力が問われた」
 --前例のない事業にどう対応したのか。
 「『被災者の立場に寄り添った真摯(しんし)な丁寧な作業』と『避難地域の住民の早期帰還に最大限貢献する』ことを基本姿勢としてきた。多くの作業は被災者の私有地に立ち入って行い、避難指示の解除に伴う帰還を前提とした作業であり、コンプライアンス(法令順守)を徹底すると同時に被災者の声に配慮した作業を心掛けた」
 「ゼネコンは、自然災害に対応してきた経験があり、多くの作業員を教育しながら事業を安全に迅速に推進できるのが強みだ。除染には多くの作業員の力が必要で、1日最大約2万人の作業員が働いた時期でも、作業に従事した人の管理や放射線量のチェックに各社が万全を期し、合同パトロールで優れた取り組みも共有した」
  ■感謝の手紙が励みに
 --苦労も多かったのでは。
 「建設工事に不慣れな人や被災地の労働者にも協力していただいた。作業員によっては安全、品質、工期に対する認識のレベルに差があったが、専任の安全担当者を配置し、日々の教育に力を入れるなど、各社がそれぞれのやり方で工夫を重ねた。線量の低減効果が分かっているため、作業は設計通りに丁寧に行うのがポイントだった。期限が決まっており、使っていなかった外国製の機械を導入したり、既存の技術を改良したりしながら生産効率を高めた」
 「仕様書や積算基準は第9版の改定まで行われ、柔軟に対応していただけた。除染は被災者と向き合う仕事で、信頼関係が欠かせない。説明会を開いたり、各社の取り組みをまとめたパンフレットを配布したりするなど情報を積極的に発信した。被災者からのお礼や感謝の手紙は励みになり、現場を『見える化』する情報発信の効果は大きかったと思っている」
 ■復興への役割果たしたい
 --中間貯蔵施設の整備や帰還困難区域の対応など復興事業の先は長い。
 「除染はものを造る仕事ではなかったが、さまざまなマネジメント力が試される歴史に残る仕事だったと考えている。復興の最優先課題として行ってきた除染の経験は、建設生産活動にもプラスになると確信している。大勢の作業員をマネジメントした経験は次の災害の対応に生きる。環境省から除染事業誌の編さんへの協力要請があった。経験のない事業に臨んだみんなが報われ、誇りに思ってもらえる内容にしたい」
 「震災から7年目。面的な直轄除染は終わったが、保管物が一括して集中管理されるようにならないと帰還の意欲を阻害することになりかねない。中間貯蔵施設関連の事業でも除染と同様に各社が安全、品質の向上と工事の迅速化に取り組まなければならない。2020年東京五輪を控えている。類を見ない復興の姿を世界の人々に見てもらえるよう除染部会としても復興のための役割をしっかりと果たしたい」。
 (だい・かずひこ)
 □パトロールで安全確保さらに徹底□
 日建連は、除染作業の安全確保に関する環境省の強い要請と山内隆司電力対策特別委員長の意向を受け、各社が対策を徹底するとともに、安全パトロールなどを行ってきた。
 パトロールは、△重機の作業半径への立ち入り禁止措置と安全管理の徹底△安全帯など安全装置の着用・使用の徹底△誘導員の役割と教育の徹底△交通事故の防止と教育の徹底-に加え、本作業から外れた「隙間的な作業」の洗い出しと安全管理の徹底も重点項目にした。
 各社は現場のパトロール結果を踏まえ、ウェブカメラで作業場所から離れている仮置き場や運搬経路の情報の把握、誘導員が持ち場を離れる場合の対応の確認、牧草地の牛ふん処理を行う際の風向き・風速のチェックなどに万全を期し、事故やトラブルの防止と、地域住民との信頼関係の醸成に努めた。「除染が進むにつれて、作業への理解が広がった」(台除染部会長)。復興への熱意、工夫、善意が、仮囲いのない空間で実施された期限のある公共事業の円滑な遂行を支えた。

(日刊建設工業新聞様より引用)