清水建設/インドネシアに吹き込む新しい風・下/日本の技術と品質を伝承

 ジャカルタ市内の交通渋滞の解消を主目的に、日本の円借款で整備が進む都市高速鉄道システム(MRT)南北線(総延長23・8キロ)。このうち6工区に分かれて施工中の1期工事15・7キロでは、清水建設を代表とする4者JVが同国初の地下鉄工区(CP104-105)の施工を担当。現地企業への技術移転を図りながら日本の技術力の高さをアピールしている。



 ジャカルタMRT南北線は、本邦技術活用条件(STEP)の適用案件として、日本企業の優れた建設技術や車両、鉄道システムなどが取り入れられている。



 清水建設・大林組・WIKA・JAYAJVが施工する工区は、延長3・9キロの地下区間で、スナヤン、イストラ、ブンドゥンガンヒリル、ステアブディの四つの地下駅舎(駅長200~220メートル)と、4駅を結ぶ延長2・6キロのシールドトンネル2本、460メートルの開削トンネルを施工する。



 中でも最も注目を集めるのが同国初となるシールド工法によるトンネル掘削。15年9月の発進式をはじめ、ジョコ大統領が5度も訪れるほど同国内では注目度が高い。



 内径6・05メートルの土圧式シールド機での掘削は、ほとんどが掘りやすい粘土層だったため順調に進んだが、シールド工事を担当する安井充工事長が「シールド機の組み立てから操縦方法、操作時の注意事項を、どうしてその作業が必要なのか、その意味を含めて一から教えなければならなかった」と振り返るように、経験のない現地の技術者や作業員への指導に苦労しながらの施工だった。



 当初は、日本人のスーパーバイザーを各機に配置し、昼夜付きっきりで指導。その熱心な指導の成果が現れ、「後半1年間は日本人は監督するだけでインドネシア人だけで掘削していた」(安井工事長)というほど現地の技術者の習熟度は上がった。当初は月進280メートルで計画していたが、昨年8月には最大月進400メートル、平均月進300メートルを達成し、当初予定よりも早く、1号機は今年1月26日、2号機は今月21日に貫通した。



 一方、現在は内部の建築工事が最盛期を迎える駅部工事でも、日本の技術を伝承しながらの施工には、多くの苦労がある。ステアブディ駅とブンドゥンガンヒリル駅を担当する坂本雅信工事長は「シールド工事は全く知識のないまっさらな状態だったので、素直に覚えてもらえたが、既に経験がある鉄筋や型枠工事は自分たちのやり方が身に付いているので、日本の質を理解してもらうように苦労した」と話す。



 日々の作業の引き継ぎもままならず、「毎日朝、昼、晩3度の引き継ぎには必ず出席し、直接指導している」(坂本工事長)という。安全に対する意識の差も大きく、朝の体操やKYといった日本式の朝礼を取り入れながら意識改革から始めるなど、24時間地道に教育しながらの施工が続く。



 シールド工事は現在、1号機の解体がほぼ完了し、2号機も3月中にも解体を終える見込み。安井工事長は「5年後、10年後に地元の企業だけでシールド工事を行うための第一歩になった」と手応えを話す。駅部では、地上歩道部に設置する駅への出入り口や換気塔の工事が始まる。坂本工事長は「歩道部には埋設物が多いので、第三者災害に気をつけながら、丁寧に施工していく」と気を引き締める。



 世界最悪とも言われるジャカルタ市内の交通渋滞解消への効果が期待されるMRT南北線。市民の生活を変えるであろう同国初の地下鉄工事は、同国の建設現場にも、新たな技術と知識、価値観を与えながら、18年12月の竣工へ向けて施工を続けている。

 (編集部・堀井厚志)

(様より引用)