菊川工業(東京都墨田区)/取引先の売掛債権電子化/資金繰り改善、事務効率向上へ

 中小の建材メーカーで、金融とIT(情報技術)を融合したフィンテックを導入する事例が出てきた。金属系内外装建材の製造と施工を手掛ける菊川工業(東京都墨田区、宇津野嘉彦社長)が、建材用の素材や資材を納入する取引業者が持つ売掛債権を電子記録債権化し、流動化によって早期の資金調達を可能とする仕組みを取り入れた。零細が多い取引先の資金繰り改善と経理事務の効率化につなげる。
 同社はフィンテックベンチャーのTranzax(東京都港区、小倉隆志社長)と契約を交わし、電子記録債権を活用して売掛金を早期に現金化できる「サプライチェーンファイナンス」と呼ぶ金融手法を導入。7月から取引先10社を対象にこの手法を始めた。年内には支払手形を発行している百数十社との取引を切り換える予定だ。
 「メタルアーキテクト」を標ぼうする同社は、設計事務所やゼネコンから依頼されたオーダーメードの金属系の内外装材やパネルなどを製造。建設業許可を持ち、取引先の施工会社による現場作業を管理しながら、製造から据え付けまでを一貫体制で手掛ける。千葉県白井市にある工場での金属加工技術が認められ、米アップルをはじめとする外国企業からの直接依頼でデザイン性の高い建材製造も行っている。
 取引業者の中でもコアな40社ほどが参画する協力会「菊和会」を組織しており、7~8社の施工会社を含めた菊和会のメンバーには、5年ほど前から現金での支払いを行っている。
 電子記録債権を活用したフィンテックは、菊和会メンバー以外の取引業者がターゲット。120日サイトの手形に替えてネットを介した資金調達手法を取り入れることで、菊和会メンバーへの現金払いとほぼ同等のタイミングと有利な条件での現金化を可能にする。
 同社としてもこれまで、百数十社に対する手形発行に伴う手続き、内容確認のための文面の読み合わせ、発送などに多くの時間を割いてきた。ネットを介したフィンテックの導入は、こうした非効率な手間と時間の削減が見込める。現金の振込先もTranzaxが運営する特別目的会社(SPC)に集約され、作業を簡素化できる。手続きを電子的に行うフィンテックは、印紙税負担が不要になる点でも大きなメリットがある。
 フィンテック導入で会社の経理担当者が手形発行に多くの時間を充てている現状を改めることができる。宇津野社長は「本来、経理部門に求めたい経営の羅針盤的な役割の仕事に特化できるようになる」とその効果に大きな期待を寄せている。

(日刊建設工業新聞様より引用)