財務省主張に業界反発/公共事業は質重視に「根拠に欠ける」/都市と地方に依然格差

 財政制度等審議会(財政審、財務相の諮問機関)の財政制度分科会は10日、社会資本整備をめぐる課題を議論した。分科会への提示資料で財務省は、社会資本の整備水準が向上し、公共事業の投資効率が低下傾向にあると指摘した上で、「量」の拡大自体が成長戦略となる状況にないと主張した。この見解に建設業界からは「公共投資は経済の安定成長に欠かせない」(団体幹部)などと批判する声が上がっている。
 分科会資料では、1990年度と2016年度の社会資本の整備水準を比較。高規格幹線道路延長は5076キロから1万1404キロへと125%増、水深14メートル以深の岸壁数は7カ所から76カ所へと986%増となっていることなどを挙げた。
 これと併せ、経済財政白書(内閣府)の資料をベースに、投資効率を示す社会資本の「限界生産性」も提示。投資効率が低下傾向にある状況から、今後の社会資本整備は「成長力の向上に向け、重点化・効率化を徹底し、公共事業の『量』の拡大ではなく、『質』の改善を相当に図っていく必要」があると主張した。
 加えて、建設業の有効求人倍率が介護事業以上に高く、今後は人手不足によって供給制約が高まってくる恐れがあるとも指摘。働き方改革を着実に推進し、i-Constructionによる生産性向上に取り組んだとしても、「量」の拡大が成長戦略になる状況にないと強調した。
 これに対し、建設業界からは「根拠に欠ける。なぜいきなりこういう主張になるのか」と疑問を呈する声が上がった。人手不足による供給制約についても、都市部と地方部には大きな違いがあり、「地方は人が余っている。むしろ仕事が足りない」と指摘する声や、「アベノミクスの効果を地方に行き渡らせるためにも公共投資は必要だ」として引き続き量の確保の重要性を訴える声も出ている。
 別の業界幹部も、財務省がプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化のための議論に終始していることを疑問視。「GDP(国内総生産)に占める割合など、国の経済規模の中で公共投資の規模も議論すべきだ」と訴える。防災・減災の観点を含めて公共投資の規模を検討すべきだと指摘する声も聞かれた。
 各地の次世代リーダーで組織する日本青年会議所も、デフレからの完全脱却に向け、3年間で45兆円のインフラ投資を行う必要性を訴えるなど、成長戦略と公共投資は密接な関係にあると主張している。
 ある業界団体の幹部は「公共投資は国の設備投資。怠れば生産力の向上は見込めない」と強調。財務省の主張への反論の必要性を訴えた。

(日刊建設工業新聞様より引用)