運転手が足りない-建設ダンプ視界不良・上/重層構造末端、収入上がらず

 ◇個人事業者9割、社保未加入も
 建設工事現場の土砂や砂利などの資材を運搬するダンプトラックの業界で、運転手不足が深刻になっている。高齢化が著しい上に、単価の低迷で収入も上がらず、若者が入ってこない。2020年東京五輪の関連工事やリニア中央新幹線の工事など大型プロジェクトが本格化する中、業界関係者の危機感は高まっている。(編集部・辰巳裕史)
 埼玉県北東部を中心にダンプを運転する個人事業者の野呂武留さん(52)は26歳の時にこの仕事を始めた。「最初の5~6年は良かったが、1996年ごろから一気に仕事が減ってきた」と振り返る。現在の年間売り上げは600万~650万円前後。そこから経費を引くと手元には400万円程度しか残らない。家族は妻と中学3年生の双子の息子。今の収入では生活は楽ではない。
 「15年の関東・東北豪雨で大水害が起きた鬼怒川の災害復旧工事で少し持ち直したが、今はまた苦しくなった」という。夏場は出水期のため河川関係の工事が減り、単価も下げられがちだ。公共工事では設計労務単価の引き上げが進んだが、運転手の大半は個人事業者で重層下請構造の末端に位置するため、どこが元請なのかもはっきりせず、引き上げの恩恵もほとんど及ばない。
 野呂さんも加盟する全日本建設交運一般労働組合(建交労)埼玉県本部ダンプ北部支部が支部員(68人)に最近実施したアンケートによると、平均年齢は63歳。最高齢は74歳で、60歳以上が49人を占める。20代はゼロだ。高齢化は全国的な傾向で、建交労全国ダンプ部会が毎春闘時に行っているアンケートの最新集計(16年春、847人)でも60~70代が半分を占め、20~30代はわずか2.3%に過ぎない。労働形態を見ると、「1台持ち」と呼ばれる個人請負事業者が9割を占めている。
 1日の単価の平均は3万4189.8円。単価が昨年比で「引き上げられた」との回答は17.5%しかなく、「変化なし」が73.4%。「引き下げられた」との回答も6.6%あった。1台当たりの総出来高は830.5万円で、経費を引いた純所得の平均は321.2万円にとどまる。
 若い人が入ってこないのは、業界の先行きに希望が感じられないためだ。ダンプを1台買うには新車だと1500万円程度かかる。かつては安く入手できた中古でも、今は500万円程度かかり、新規参入は難しいという。
 「一人親方」として扱われる個人請負事業者は国の社会保険加入促進策の対象からも除外されている。このため社会保険未加入の人も多く、受給年齢に達しても年金がない人も少なくないという。昨年春の全国ダンプ部会のアンケートでは、一人親方の労災保険にも6割が加入していなかった。
 厳しい環境を背景に、過積載・違法改造車の問題もなくなっていない。北関東では「差し枠」を使わずに深さが2メートル程度ある産業廃棄物用のダンプを使う不正改造車が横行しているともいわれる。
 「警察の取り締まりが不徹底な部分もあるが、生活のためにはそうせざるを得ない面がある」。業界関係者はそう話す。

(様より引用)