運転手が足りない-建設ダンプ視界不良・下/全国団体消滅で「窓口」なく

 ◇運輸と建設、業行政の谷間に
 長野県ダンプ協会の清沢文好専務理事は「長野県の場合、目の前にリニア中央新幹線の工事がある。トンネルのずりが大量に排出されることを考えると、ダンプの不足は明らかだ」と指摘する。雪国では除雪にもダンプは不可欠だ。
 日本機械土工協会(日機協)の合理化対策委員会の細川潤一郎委員長は東京都内の建設ダンプの需給について「現在はほぼ均衡しているが、東京外かく環状道路のトンネル工事が今後本格化する。このままでは相当ひっ迫するのではないか」と懸念する。運転手が高齢化し若年層の入職が少ない中、単価を上げるだけでは供給が追い付かないとみる。
 ダンプ業界は市場縮小などの影響で各都道府県組織の解散が相次ぎ、10年以上前に全国団体がなくなった。協会組織が残っているのは現在、4県(長野、新潟、埼玉、千葉)だけ。もっとも全国団体の時代から協会の事業は講習会の開催など「交通安全対策」が中心で、建設業の元請・下請団体などとは違って、会員の経営・労働条件の改善などには深く関わってこなかった。
 業界の窓口役として全国規模の業界団体が機能していれば、会員の意見を集約して行政・発注機関への要望を行ったり、国も実態に即した「業行政」を進めやすくなったりする可能性がある。
 新潟県ダンプ協会の板垣隆専務理事は「ダンプ運転手は『大型免許さえあればよい職種』と見られている。資格取得などのキャリアコースも見えない。それらが社会的地位が上がらない理由になっている。兼業が多い業種でもあり、実態を把握しにくい面がある」と指摘する。「業界の正確な実態がつかめない」との声は業界内でもよく聞かれる。
 所管官庁の国土交通省では、自動車交通局貨物課がトラック運輸行政全般の窓口。建設ダンプも「トラック運輸業の一部」と見なされている。ネット通販の拡大などによる運転手不足はトラック業界全体の問題だ。同省は「低賃金と長時間労働という問題が根本にあると認識しており、他省庁とも連携し、各種の施策を進めてきた」(中村浩太郎活性化・生産性向上対策専門官)という。だが、さまざまな対策事業の中でも、建設ダンプに特化した施策はない。
 建設ダンプの運転手は、国交省が毎年度定める公共工事設計労務単価の対象職種に含まれており、各都道府県ごとの賃金額が示されている。宅配便など一般的な運輸業とは職種の性格が大きく異なるだけに、トラック業界としてひとくくりにするのは無理がありそうだ。
 クレーン工事業やコンクリートをポンプ車で運ぶコンクリート圧送工事業などは、同様に車両を使う業種でも建設業の領域に位置付けられる。建設ダンプの場合は、運輸業と建設業にまたがる谷間の領域にあるために、どうしても位置付けがあいまいな状態になる。これが行政施策の網から漏れてしまう大きな原因になっている。
 「省内で建設ダンプを別立てにして独自に対策を進めようという動きは出ていない」(中村氏)のが現状だが、行政上の位置付けを明確にすることが、政策を本格的に進めていく前提条件といえる。
 官民で建設現場の担い手確保策が進められているが、現場内の技能者を確保できても、資材が運搬できなければ工事は進まない。本腰を入れた取り組みができるかどうか、状況は待ったなしだ。
 □取材を終えて□
 建設ダンプ業界を取材して強く感じるのは、「どこからの仕事か分からない」というほど構造が重層化し、しかも個人請負という本質的な立場の弱さがあることだ。例えば協同組合化で重層性を弱め、経済的な立場を高めることも問題解決に向けた一つの方法ではないか。運輸関係の代表的な個人事業者組織として個人タクシーの協同組合がある。全国約3万6000人の事業者のうち92.8%(16年4月現在)が各地の協同組合に加入。平均年齢は64.1歳という。全国個人タクシー事業連合会は、月7000円程度の会費で相互扶助制度や所得補償制度を運営している。ダンプ運転手の生活を安定させ、若い担い手を確保するために、こうした他業界の取り組みも参考にしてはどうか。
 (編集部・辰巳裕史)

(様より引用)