長谷工コーポ/ベトナムでの挑戦・下/日本の品質を海外へ

 ◇ノウハウ継承し、最適な施工体制を確立



 長谷工コーポレーションがベトナム・ハノイで完成させた日本人向けの高層賃貸住宅「THE AUTHENTIC(オーセンティック)」は、今後も経済成長が見込まれるアジア市場に確固たる事業基盤を築くためのメルクマールとなるプロジェクトだ。日本国内で長年にわたって提供し続けてきた高品質で快適な住宅を、施工条件が厳しい海外でどう提供するのか。同社は初めてのプロジェクトでこの課題に正面から取り組んだ。



 地震の心配がないベトナムのマンションは、れんが積みで鉄筋を入れない外壁が一般的という。開口部も樹脂製の窓をビスで留める施工方法が主流で、防水性は日本ほど高くない。同社の建設部門を束ねる鶴田高士執行役員は「当社が求める安全・安心で快適な建物を作るためには、設計から見つめ直す必要があった」と話す。



 具体的には、日本基準のマンションをベトナムで開発するため、外壁の仕様を鉄筋入りのコンクリートブロックに変更し、弾性吹き付け材を使用し防水性も高めた。さらに、窓にはアルミ製のサッシを採用。溶接で固定してからモルタルで留めることで気密性・水密性を向上させたという。高品質な仕様を取り入れることで建物の付加価値を高め、他の物件と差別化を図る狙いがあった。



 オーセンティックは、ハノイ市の中心部から東に5キロほど離れた新興開発エリア、ロンビエン区に建設した。総戸数は110戸。ハウスキーピングなどのサービスのほか、フィットネス施設やレストランなども備える。設計は現地企業のサンマイコンサルタントコンサルティー、設計監修・施工は長谷工コーポレーションがそれぞれ担当。管理運営は現地デベロッパーと合弁で設立したHASEKO HIMLAMBCが手掛ける。



 「ベトナム在住の日本人が安心して生活できる空間」や「日本と変わらない生活が送れる住宅」をコンセプトに、快適性や遮音性など6項目をキーワードに掲げ、高い品質を追求した。その実現策として、同社は技術研究所での技術検証を徹底。ベトナムの施工条件や資機材で、日本と同等の性能を担保するにはどうすればいいのか、さまざまな試験を繰り返したという。



 技術検証が済んでも課題は残る。それは現地でいかに高い施工性を確保するかだ。工事を指揮した田口雅克所長は「国内では長年付き合いのある協力会社に支えられ品質は担保されてきたが、海外ではそうはいかない。当初は、ヘルメットのかぶり方や安全靴の履き方から指導し、安全に対する教育を徹底するところから始まった」と語る。



 「着工時には大きな不安があった」と話す田口所長だが、工事が軌道に乗り始めると「現地のワーカーは真面目で、施工方法を的確に指導すれば高い品質を確保でき、工期の厳守にもつながった」という。ベトナムでの仕事に手応えを感じている。



 同社は初弾プロジェクトで培ったノウハウを次の案件、さらには参入を目指す分譲マンション事業に生かす考えだ。高品質のマンションを海外で開発・供給するという挑戦は、次のステップに移ろうとしている。

(編集部・浅見敬彦)

(様より引用)