駆け出しのころ/清水建設専務執行役員建築総本部設計本部長・栗山茂樹氏

 ◇まずは上司を納得させられるか
 小学生の頃に新しい代々木体育館を見て、子どもながらにも素晴らしい建物だと感じました。これが建築の世界を目指すようになるきっかけだったかもしれません。
 建築設計をやりたくて入社し、設計本部に配属されましたが、2年目にCADを開発する部署に異動し、その後も企画部の業務を担当するなど、若い時から仕事を覚えた頃にまた異動するという経験をしてきました。異動するとそれまでの経験はゼロに近い状態となり、また新たに一から知識を積み上げていく。この繰り返しだったように思います。
 そうやって設計になかなか携われないでいたのですが、30代半ばで名古屋支店設計部に異動してからの5年間は、やりがいと充実感を持って本業の設計業務に従事できました。ここで最初に設計したのは企業の保養所です。コンペの段階から携わりました。あるホテルの設計を担当した時には、お客さまの息子さんと同年代だったこともあり、一緒によく懇談させていただいたのも貴重な思い出になっています。
 若い頃に上司から言っていただいたことで、印象に残っている言葉があります。それは「設計の世界だけを見ていては駄目だ」というものでした。建築では経験則が必要なため、経験を積んで一人前になるには、ある程度の年齢にならなければなりません。これに対し、30歳前後で早くも一人前になり、経営者も若い方々が多い業種もあります。視野を広げる意味でも、世の中ではどの年齢層が何をやっているのかを見ておくことが必要だと教えていただきました。
 設計施工のメリットを最大化するよう動く。会社でよく言っていることです。作業量が同じであれば、いかに効率化を図るか。AI(人工知能)やICT(情報通信技術)などはものすごい速度で進化しており、こうしたツールを有効に活用していかないと、本当の意味での働き方改革は実現できません。
 そしてお客さまに納得していただける提案を行うには、第三者の目で見てもらうことが大事であり、まずは自分の近くにいる上司を納得させることができるかどうかが重要です。自分のこと、プロジェクトのことをよく分かっている上司を納得させられなければ、お客さまに理解していただくことは難しいでしょう。
 最近はコミュニケーションをうまく取れる人、取れない人の差が随分出てきたように思います。伝えたいことはメールでも伝えられますが、これは一方的な発信です。言葉を直接交わしてこそ分かることも多く、若い人たちはこうしたコミュニケーションを大切にしていってほしいものです。
 (くりやま・しげき)1979年大阪大学大学院工学研究科建築工学専攻修了、清水建設入社。九州支店設計部長、建築事業本部環境・技術ソリューション本部長、執行役員建築事業本部設計本部長、常務執行役員建築事業本部副本部長兼設計本部長などを経て、17年4月から現職。山口県出身、63歳。

(日刊建設工業新聞様より引用)