BIMのその先を目指して・25/樋口一希/帝国ホテル旧本館をVRで再現

[20171012-12-03-001]BIMのその先を目指して・25/樋口一希/帝国ホテル旧本館をVRで再現[n1]
 凸版印刷では、フランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテル旧本館「ライト館」の全容を再現するVR(virtual reality)作品の製作を進めていたが9月29日、自由学園明日館で開催された「フランク・ロイド・ライト生誕150年記念シンポジウム」において現在の進ちょく状況を初公開した。

 □顕在化する膨大な改修設計ニーズにも援用可能な歴史的建造物などのデジタル再現技術□

 建築分野においても急速に普及が進むVR技術。マンションメーカーなどが新築建物のプレゼンテーションに用いるとともに、設計者によるVR空間上でのBIMの3次元モデルの確認や施工現場での墨出しに至るまで運用範囲は広がりを見せている。
 本事例は、老朽化で解体、移設された歴史的建造物の再現が目的だったが、これらのデジタル再現技術は、今後、顕在化する膨大な改修設計などのニーズに援用可能だ。
 凸版印刷では、ライト館に関する資料を所蔵する早稲田大学中央図書館や博物館明治村、LIXIL、帝国ホテルの協力を受け、現存する関連資料をデジタル・データ化、18年3月の完成を目指し、製作を開始した。現状では外観、エントランス、ロビー、ダイニングルームのコンテンツが完成、館内の昼夜の印象の変化や調査時に得られた情報を基にしたシミュレーションを行っている。
 ※「帝国ホテル・ライト館の再現」紹介動画
 https://www.youtube.com/watch?v=iLPmwekfDWQ

 □オルソスキャナーでの図面のデジタル化とともにドローンによる外観のデジタル撮影も実施□

 VR作品は修復が行われる以前、開業10年後となる昭和初期のライト館の姿を想定し、製作したもの。さまざまな研究調査から建築部材の形状計測、素材調査、竣工・解体までの記録写真に基づき空間を再現している。ライトが設計時に想定していた菩提石が実際に使われた場合の空間の様子や柱のスダレ煉瓦の目地に金泥が塗布されていたという記録に基づいた空間再現も行っている。
 凸版印刷では、独自開発した文化財専用オルソスキャナー(※)を用いて、ライト館の解体時に早稲田大学建築学科の明石信道教授の研究室により実測された約100枚の図面の精細なデジタル化にも成功した。
 博物館明治村では、ライト館解体後、様式保存し、中央玄関として一般公開しているエントランスとロビーの一部を高精細撮影と立体形状計測によってデジタルアーカイブ化し、外観はドローンを用いたデジタル撮影を実施した。
 LIXILの文化施設、INAXライブミュージアムでは、ライト館で使用されていたとされる大谷石の調査や博物館明治村や帝国ホテル・遠藤現氏・グループ現代が所蔵する写真資料や映像記録、東京工業大学平井聖名誉教授所有の測量写真など多くの関係者の資料を収集・検証し、往時の姿を再現することに成功した。
 ※オルソスキャナー=オルソ(ortho)とはギリシャ語で「正しい、ひずみのない」という意味。1万分の1の寸法精度でスキャン可能なため、文化財などの巨大図面を複数回に分けスキャンしても容易に接合が可能となる。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

(様より引用)