シリーズ・国のかたちを考える2018/ロボットクリエーター・高橋智隆氏

 ◇ロボットが人と情報の接点に
 建設現場にロボットが実装されるようになってきた。人間の感覚はあるスケールを超えると水平や垂直を正しく認識しづらくなるが、ロボットは広い面積を平らに整地したり、正確に測量したりできる。こうした特徴を生かしたロボット活用が土木分野で進んでいるが、いずれは建築分野へと拡大し、やがて一戸建て住宅にも応用されるだろう。
 自宅を建てた経験からも建築分野特有の問題を実感した。描いたデザインを実現しようとしても、前例がない、規格品がない、施工者がいないと思い通りにいかない。そして工期も予算もふくらむ。そんな問題を一つ一つ乗り越えるため建設に2年以上を費やし、今も手直しの工事が続いている。
 日本には食やファッション、ポップカルチャー、メディアアート、工業デザインなど世界に誇れる文化がたくさんある。だが厳しい住宅事情もあり、住まいに関してはむしろ欧米諸国に遅れていたように感じる。しかしこれからテクノロジーの力で世界に追い付き、追い越せるのではと期待している。
 昨年、米国のボストン・ダイナミクス社が開発したバク宙するヒト型ロボットが話題となった。その部品は3次元(3D)プリンターで製作されている。モーターではなく油圧で動くロボットだが、油圧シリンダーなどが外付けされていない。その骨格の中に油圧のシリンダーや配管が組み込まれた構造を金属3Dプリンターで一体成型しているという。
 建築物でも同じことが可能なのではないだろうか。水や電気、ガスなどさまざまな設備の配管を内蔵した躯体を3Dプリンターで構築する。梁をかわした配管やそれを覆うボードが不要となり、建築の自由度が高まる。コスト縮減や工期短縮にもつながるだろう。中空の立体構造にすれば、現在3Dプリンターで使っている樹脂でも十分に建築物ができるのではないか。それによってデザインも設計手法も大きく変わるだろう。
 こう言いながらも私は3Dプリンターを使わず、今でも職人的な手作業でロボットのプロトタイプを製作している。黎明(れいめい)期のロボット産業はまだ手探りで研究開発をしている。一方、長い歴史のある建設産業には一歩先を行く進化に期待している。
 人工知能(AI)技術の進歩により、ヒト型のコミュニケーションロボットが人と機械・情報をつなぐインターフェースとして活躍する日も近いと感じている。もちろん人と住宅との間を取り持つ役目も担うだろう。人と心通わせながら共に暮らすロボットを目指し、これからも研究開発を続けていきたい。
 〈ロボ・ガレージ社長、東京大学先端科学技術研究センター特任准教授〉
 (たかはし・ともたか)1975年京都府生まれ。2003年に京都大学工学部を卒業し「ロボ・ガレージ」創設(学内入居ベンチャー第1号)。代表作にロボット電話「ロボホン」やロボット宇宙飛行士「キロボ」など。ロボカップ世界大会で5年連続優勝。

(日刊建設工業新聞様より引用)