シリーズ・国のかたちを考える2018/東洋大学理工学部教授・野澤千絵氏

 ◇空き家対応、業界が中間組織構築を 
 人口減少時代に入った日本で空き家問題が深刻化の度合いを増してきた。国の最新調査で空き家は全国820万戸を超え、15年後には2100万戸に達すると予測されている。
 この問題に長く関わってきたが、最近になって痛感しているのは、近隣に迷惑・危険を及ぼすような問題空き家に対応するための法制度を整備するだけでは解決できないということだ。空き家の解体も跡地の活用策がないとなかなか進まない。空き家やその跡地をどのように利活用し、魅力的な用途に変えていくといった「コンテンツ」の企画力が問題解決の鍵となる。
 導入機能や事業の企画・提案、所有者と利用希望者とのマッチング、法手続きなどを担う「中間的組織」やそれを担う人材が重要になる。だが、それに近いことを行っているのは篤志(とくし)的・ボランティア的な人たちが多く、ビジネス分野として抜け落ちた領域になっている。今後、ビジネスとして成立する「市場・業域」を構築していくことが必要だ。
 ゼミなどで大学生たちと接していると、最近は地元志向やUターン志向が以前より高まっていると感じる。しかし、「施工管理だけの会社なら東京でも変わらない。地方に戻るなら、地域やまちの再生・活性化も手掛けているような会社で仕事をしたいが、そういった会社が見つからない」といった声を聞く。
 確かに、地方の建設業は施工管理しか行っていない会社がほとんどだ。建設業は、インフラの維持管理や災害時の応急復旧など国民生活の安全・安心を支える上でも欠かせない存在だ。公共工事などの施工に加え、例えば、空き家や空き地の利活用を通じた地域再生ビジネスを、一つの経営軸として位置付けていくべきだと考える。こうしたビジネスを展開できれば、景気や公共事業量の変動による影響も受けず、テナントの賃料収入や施設の管理・運営マネジメントなど継続的な収益の確保につなげることもできる。
 もともと地域の建設業の方々は地域貢献への思いが強い。若者の地域貢献志向に応えながら、地方の今後を担う人材の確保・育成と地域再生へ向けて、新たなビジネスモデルを構築していってもらいたい。
 現在の不動産やその所有者にかかわるさまざまな法制度は、土地に価値があることを前提に設計されている。空き家や所有者不明土地の増大という問題の背景には、これまでは資産とされてきた不動産への意識が変化していることも大きい。今後、急速に進む人口減少の中で、どのように都市・地域が持続的に更新していくのか、そのために必要な法制度の具体的な改善方策について、建設業界からもっと積極的な提案があってもいいと期待している。
 (のざわ・ちえ)1996年阪大大学院環境工学専攻修士課程修了後、ゼネコンで開発計画などに従事。2002年に東大大学院で博士号(工学)取得。東大院非常勤講師などを経て、07年から東洋大理工学部建築学科准教授。15年から同教授。兵庫県出身。

(日刊建設工業新聞様より引用)