シリーズ・国のかたちを考える2018/野村総合研究所顧問・増田寛也氏

 ◇人口減少で仕組み点検・再構築
 わが国が直面する一番大きな問題は人口減少であり、その影響が社会全体に広がりつつある。人口増を前提に整備されてきた制度が多く、これまでのやり方や既成概念を抜本的に見直していく必要がある。土地や社会保障など既存の基礎的な仕組みを点検し、「うまく縮みながら国を豊かにする施策」を冷静に考えていかなければならない。
 同時に建設業も含めた多くの分野で人手不足が顕在化する中、人工知能(AI)やロボットなどの積極的な活用で思い切って生産性を高めるチャンスでもある。
 2040年には単身高齢者が4割を超えるとされる社会を、地域でどう支えていくのか。団塊世代が亡くなると大量相続が始まり、所有者不明土地の増大も懸念される。生前に所有権を放棄し、公的機関に権利を譲って土地を適切に管理するような仕組みの導入も一つの方向だ。
 これまで駅前の一等地には商業施設の整備を誘導し、にぎわいを創出しようとしてきたが、eコマース(電子商取引)の普及で消費行動が大きく変化している。超高齢社会を見据え、商業系よりも病院や社会福祉系の施設を集約整備するとともに、歩行プラス公共交通機関で通える街づくりを考えるべきだろう。
 地域格差が広がる中で、中核的な地方都市を中心に複数の周辺都市がつながり、必要な機能を補い合う連合体の形成も地方のあるべき姿と言えよう。
 地方では、農林業といった第1次産業と建設業は雇用の受け皿となってきたが、今は就職先として敬遠されている。産業の魅力を高め、若者を振り向かせる努力が求められる。地方は生活コストが安く豊かな暮らしが送れる。雇用があり働く環境も改善されれば、東京に出ていこうとする若者も減るのではないか。
 公共事業は税収が減れば削減の矛先が向けられやすい。インフラの整備が必要なところはまだあるが、建設業が公共事業に依存していては産業としての安定性を損なう。コンセッション(公共施設等運営権)への対応のほか、地域発の民需を増やす動きがもっと出てくるべきではないか。建設業には広い意味での「街のデベロッパー」としてノウハウが提供できる形を模索してほしい。
 ダムや高速道路などを造る仕事に加え、都市や街をどのように形成すれば人口動態の変化にうまく対応できるかといったアドバイスを行うなど、産業全体で持つ技術やノウハウをトータルで提供できるようになる。そうした大胆な変化を期待する。
 高齢化時代の街づくりや社会インフラの維持管理など、日本で成功した経験を他国に伝えていくことも必要だ。
 (ますだ・ひろや)1951年12月生まれ。77年東大法学部卒、建設省(現国土交通省)入省。建設経済局建設業課紛争調整官などを経て、95年岩手県知事に。3期務めた後、07年8月総務相。09年4月から現職。東大公共政策大学院客員教授も務める。
 〈本紙創刊90周年企画シリーズとして、各界の識者にそれぞれが考える「国のかたち」を聞き、これからの変革の道筋を探ります。〉
 (随時掲載)

(日刊建設工業新聞様より引用)