シリーズ・国のかたちを考える2018/JR東日本会長・清野智氏

 ◇地域の顔であり続ける駅の魅力向上
 鉄道が新たな交通インフラとして初めて世の中に出てきたころは、街の真ん中にそんなものを造られたら困るという理由で整備が思うように進まなかった所も多かったと聞く。状況が大きく変わったのは戦後。駅が街の中心に位置付けられ、地域の発展に寄与するようになった。
 かつて駅舎は片側だけにあるのが普通で、反対側には「駅裏」というマイナスイメージの呼び方もあった。そこで出てきたのが、線路をまたぐ陸橋に設ける橋上駅舎。線路の両側から駅にアプローチできるようになり、駅周辺で表も裏もない街づくりが進められるようになっている。
 駅周辺の現状は地域によってさまざまだが、今も多くの駅が街の「顔」として機能している。これからも多くの人に利用していただき、街の顔であり続けたい。
 近年、都心部では駅前の土地区画整理や再開発事業などと連携して駅の姿が考えられ、鉄道事業者も地元の意向を踏まえて駅施設のあり方を検討している。例えば、「首都東京の顔づくり」を目指して進められた東京駅と周辺の再整備では、赤れんがの丸の内駅舎だけでなく、駅前広場や行幸通りを含めた一帯が大変きれいになった。外国から訪れた皆さまからも「すごい」と高い評価を頂いている。
 東京では、羽田空港に近く、リニア中央新幹線も整備されるターミナル駅の品川周辺で、これから山手・京浜東北線の新駅整備と併せた新たな街づくりも動きだす。都心に残された数少ない大規模開発エリアだけに、周辺の街と駅が調和し、東京の新たな顔として魅力を高めたい。ITインフラを整え、いずれは人工知能(AI)を活用した機能・サービスなどいろいろ実験的な取り組みも考えたい。
 これからの日本の大きな問題は人口減少だ。この問題への対応で鉄道はどういう役割を担えるか。その一つに、地方のコンパクトシティーに対する役割がある。地方都市では職住などの都市機能を中心部にコンパクトに集約する取り組みが進んでいる。駅をこうした地域の中心施設として機能させたり、コンパクトシティー間を円滑に移動できるようにしたりする施策を行政などと一緒に考えたい。
 観光客を呼び込んだり、企業誘致で働き手の居住促進を図ったりなど地域ごとにそれぞれの発展方策がある。そうした道筋を描く際にも、鉄道ならではのいろいろな貢献ができるはずだ。
 新設、改良、そしてこれから極めて大切になるメンテナンスなど、鉄道事業は建設業なしにはやっていけない。建設業界は今、担い手不足が深刻だと聞く。生産性の向上や働き方改革を進め、社会に開かれた業界として歩みを進めてほしい。
 建設業界に対し鉄道事業者はこれまで発注者の立場からコスト削減や工期短縮をお願いしてきた。今後はより良いものづくりのために、互いに腹を割って本音の議論をしていくべきだと思う。
 (せいの・さとし)1947年9月生まれ。70年東北大法学部卒、国鉄入社。96年JR東日本取締役、00年常務、02年代表取締役副社長、06年社長、12年会長。東北観光推進機構会長、日本ショッピングセンター協会会長も務める。

(日刊建設工業新聞様より引用)