シリーズ・国のかたちを語る2018/国際連合大学上級副学長・沖大幹氏

 ◇快適で安全な未来への覚悟
 日本は人口減少社会となり、国家予算も逼迫(ひっぱく)している。そうした中で、戦略的な計画に基づいてインフラの整備と維持・更新を進めていかなければならない。インフラを現在の規模ですべて維持するのは難しい。このままだとインフラやエネルギー、通信、教育などの水準を保てなくなる地域が出てくるだろう。30年、40年後には別の地域に人を誘導するといったようなことも考えていかなければならない。快適で安全なインフラを未来に残していくにはそうした覚悟も必要だ。
 気候変動による影響は、これまでに蓄積されたデータから多くのことが分かってきた。一つは気温の高い日には激しい雨が降りやすいということ。それも短時間に強く降る。「ゲリラ豪雨」と呼ばれるように直前にならないとどこで降るか分からない。かつて洪水は川の近くで起きるものだったが、今は都市部のどこでも起こり得る。
 台風は全体数こそ減るが、いったん発生すると米国気象庁の分類でカテゴリー4や5といった非常に強い勢力に発達する台風が増えると予測されている。現在の建物の構造は主に地震動を基に設計されているが、場合によっては最大風速毎秒70、80メートルに耐えられるようにする強度計算も必要になるかもしれない。
 こうした気候変動の影響を一番大きく受けるものの一つがインフラだ。大きな災害でライフラインが寸断され、それを補修する、あるいは壊れないように強度を増して造る。そのためのコストがかなり大きくなるという調査結果が出ている。温暖化は、海や川といった水の関連だけでなく、実は道路や鉄道、送電線などのインフラにもかなりの影響を及ぼす。もっと視野を広げて考えた方がいい。
 世界には水不足に悩む国が多い。だが、水が足りないのは降雨量が少ないからではない。日本で豊富な水が得られるのは、恵まれているからではなく、インフラを整備して恵まれるようにしたから。同じようなことを途上国でもやらないと世界の水問題は解決できない。「気候が違うから水に恵まれない」などと言っていたらそれで終わってしまう。日本仕様のものを造るのでなく、資金や人的資源も限られ、しっかりとした組織がない国や地域でも水資源を確保でき、マネジメントしていけるシステムの開発が求められる。
 国際競争では、日本企業は多少値段が高くても高いクオリティーが要求される場合などに優位性を発揮する。一方、国際社会では働き方に問題があったり、男女が平等でなかったりする企業は排除される傾向が強まっている。2020年の東京五輪後に本格的な海外展開を目指す建設会社は、ガバナンスや人権への配慮、コンプライアンスなどに問題がないようにしておかなければならない。
 (おき・たいかん)1964年11月生まれ。89年東大大学院修了。東大生産技術研究所(IIS)助教授、教授などを経て、16年10月から現職。現在もIIS教授、東大総長特別参与を兼任。国際連合事務次長補。気候変動に関わる政府間パネル(IPCC)第5次報告書統括執筆責任者、国土審議会委員などを務める。

(日刊建設工業新聞様より引用)