ゼネコンの新人研修・下/定着率向上へ内容充実/メンター制度など検討

 各社が新入社員研修に力を入れる理由は、戦力としての新入社員の能力開発だけではない。昨今の産業界共通の課題となっている担い手不足も大きな要因だ。若い人材を確保するため、採用の増加と定着率の向上を両輪に、入り口段階での取り組みを強化する企業が増えている。

 その中で大林組やフジタ、竹中土木など多くの企業が導入または導入を検討しているのがメンター制度。配属部署の上司や先輩とは別に、指導・相談役となる先輩社員が新入社員をサポートすることで、社内になじみやすい環境を作っている。高松建設は、個々の企業での研修とは別に、グループ全体での新入社員研修も行い、同業他社との交流機会を作ることで、建設業の仕事への理解と業界内でのつながりを醸成している。

 日刊建設工業新聞社が主要ゼネコン33社を対象に実施したアンケートによると、17年4月の新卒採用人数は、21社で前年を上回った。採用人数が拡大傾向にある中、新入社員研修にも見直しの動きが見られる。

 清水建設は、これまで座学を中心に4月の入社後に1週間だった全体研修を、4月に2週間、9月と翌年2月に再度1週間ずつの計3週間に拡充。同社の原点となる富山市の清水記念公園や作品群の見学などで建設業の社会的使命や同社のDNAを注入する。

 研修期間については、戸田建設が建築部門で6カ月間の合宿による本社での集合研修を導入し、その後も配属先でのローテーション研修と1年間を通した研修体制を整備。若築建設は従来より2週間延ばすほか、鉄建建設は2週間だった研修期間を3カ月間に延長し、基礎的な知識や能力の習得と併せて同期入社の連帯感醸成を図る。

 大成建設は、研修時のグループワークを充実させるほか、幹部社員らとの面談や懇親、意見交換の機会を作り、コミュニケーション能力とともに、新入社員だけではない社員同士の一体感を養う。

 東鉄工業もチームごとに与えられた課題を解決する「クロスフィールド研修」を取り入れるほか、社会人としての常識を教えるマナー研修の時間を増やす。三井住友建設は、逆境を乗り越える心を育てることを目的に、「レジリエンス」をテーマにした講義や実習を新たに加える。不安や悩みを抱える新入社員の精神面をケアし、学生から社会人へと変わる環境変化に順応しやすい環境を整える。

 早い時期から建設業の仕事になじんでもらい、仕事のミスマッチを解消しようと、技術研修を充実させる企業も多い。三井住友建設は土木部門の現場実習研修の中で、6週間の実技合宿を導入。西松建設は全新入社員に「足場の組み立て等作業従事者特別教育」を実施する。

 清水建設は、昨年10月に「ものづくり研修センター」を新設した。鉄筋・型枠、鉄骨・外装、プレキャスト(PCa)の3種類の実物大構造躯体を使い、躯体工事の基礎知識や検査方法を学べる施設で、4月の新入社員研修から本格運用する。

 ある企業の採用担当者は「最近の学生は、会社の教育体制にも関心が高い」と話す。担い手不足が業界全体の課題となる中、企業経営に果たす新入社員研修の重要性は今後ますます高まりそうだ。

(様より引用)