タダノ/高松塚古墳石室・壁画修復支援作業がものづくり日本大賞経産大臣賞受賞

 タダノが10年前に手掛けた高松塚古墳(奈良県明日香村)の石室・壁画修復支援作業が、「ものづくり日本大賞」の経済産業大臣賞に選ばれた。長年培った独自のクレーン開発・操作技術を応用し、損傷した国宝の壁画を修理するための石室解体を支援した。失敗が許されない難事業を成功に導き、高度な技と知見、建設業が果たす役割の大きさを広く印象付けた。
 ◇ものづくり日本大賞の部門賞受賞
 7世紀末から8世紀初めにかけて築造された高松塚古墳には、凝灰岩の切石を積み上げた石室内の側面に、極彩色の壁画が描かれている。国宝にも指定されたこの壁画がカビや虫害で傷んでいると判明したのは2004年。解体・修理に向け石室ごと壁画を外に取り出すため、06年に作業前の発掘調査が始まった。
 地中に埋もれた壊れやすい切石を一つずつ取り上げる作業には特殊な器具とクレーン、それらを操作する高度な技術が必要となる。
 前例がない難事業を遂行できる技術と知見を持つ企業として、1990年代前半にイースター島のモアイ像を修復するプロジェクトに関わった経験のあるタダノに白羽の矢が立った。
 石室・絵画を搬出する作業は07年4~8月の約5カ月間をかけて行われた。石室を構成する16枚の切石を天井、側壁、床石の順につり上げ、付近の修理施設に移送していった。市販のクレーンでは貴重な石や絵を傷めずに、地面や隣り合う石から切り離す繊細な作業が行えないため、両側から石を挟み込む専用の機材を製造。金枠で石を固定し、石室上部に組み上げた天井クレーンで丁寧に持ち上げていった。
 作業を指揮した同社技術研究所の山本耕治マネージャー(当時)は、「一つ目の石をつり上げるまでが勝負だった。地中にある石室の全体像が見えず、器具で石を挟む“つかみしろ”もなかった」と作業の苦労を振り返る。
 土中から最初の石を取り上げて強度や含有水分などを分析し、データを取得してしまえば、その後は同様の作業を慎重に反復すればいい。石を取り出すたびに情報量は増し、作業の精度が高まっていく。
 このため、最大の難所となる一つ目の石を取り外す作業の準備に、全神経を集中させた。
 石室の模型で予備演習を何度も繰り返しながら、石のひずみや振動などのデータを取得。石をつり上げる際の最適な力と方向を割り出し、作業に反映させた。
 計測・分析作業を担当した技研の小阪孝幸技術企画ユニットマネージャーは「石の状態を見て、つり方を自分たちで決める必要があった。作業を通じてデータを残すことができた意義は大きい」と話す。
 壁画を修復・保存する作業は、石室解体から10年以上が経過する今も続けられている。古墳壁画の保存・活用を検討する文化庁の有識者組織によると、壁画の修理は19年度末までに終わる見通し。
 クレーン技術で文化財の復旧に貢献した実績は国内外に大きなインパクトを与えた。石室搬出後、タダノの企業イメージと知名度は高まり、入社希望者も増加した。ただ、会社として文化財復旧支援の取り組みをアピールするつもりはなく、「高性能な機械を開発・提供する本分を全うする」(広報担当者)との考えを強調する。
 今回、同社が受賞したのは、ものづくり日本大賞の経済産業大臣賞となる「ものづくりプラス企業」部門。独自の製品を活用し、優れたサービスやソリューションに展開した企業などを評価・表彰する枠組みだ。
 受賞件名は「世界に先駆けた、建設用クレーン技術の応用による文化財保護・修復支援サービスの展開」。
 受賞者は山本耕治(タダノ)、小阪孝幸(同)、坂井敬通(同)、真鍋富士夫(真鍋プランテック)、矢野将人(カワニシ)の5氏。

(日刊建設工業新聞様より引用)