低価格応札と企業戦略/東京都下水道局発注工事にみる入札参加者の思惑

 ◇先の受注見据え施工実績確保
 既存の下水道施設の再構築などを進めている東京都下水道局の工事の入札で、参加企業らが将来の受注量確保を見据えたさまざまな戦略を展開している。事業の初弾となる工事が発注されれば、その分野をリードする最重要案件と捉え、積極的に入札に参加。既に施工実績を積み上げている工種の案件では、若手技術者の育成を図る場として受注を目指す動きも活発だ。
 下水道局は20年度末までの主要施策の進ちょく目標を公表している。下水道管路の枝線の再構築は計1万0059ヘクタール(16年度末までの見込み=7294ヘクタール)、老朽幹線の再構築は計96キロ(同=67キロ)、震災対策は計99施設(同=34施設)、合流式下水道の改善は計140万立方メートル(同=115万立方メートル)の整備完了をそれぞれ目標に設計・施工を進める見通しだ。
 こうした潜在的な建設需要を見据え、工事1件当たりの利益が薄くても確実に施工実績を蓄積し、次の大きな受注につなげようとの思惑が各企業の応札状況からうかがえる。
 本年度、汚泥焼却設備を再構築する工事を低入札価格調査を経て落札したある業者は、都のヒアリングに対し、「エネルギー自立型焼却炉を下水道局が発注する初の案件であることから、今後の汚泥焼却分野をリードする最重要案件と位置付けた」と応札に踏み切った理由を説明。施工に必要な機器の購入に当たっては、長年の取引実績がある協力会社との関係を生かしてコストを下げているという。
 下水道局の入札では、これまで数多くの同種工事を手掛けてきた経験や技術を途絶えさせないよう、若手技術者を積極的に起用する企業もみられる。この場合も確実な受注を目指し、会社を挙げての資機材の集中購入や、協力会社と共同開発した製品の利用などの工夫で可能な限り応札額を下げる傾向が顕著だ。
 一般的に行き過ぎた低価格入札には、工事の品質や安全が十分に確保されない懸念もあり、コスト縮減に取り組む際は、施工体制や現場の安全の確保で一層の企業努力が求められる。
 低入札価格調査を経てあるシールド工事を落札した業者は、対策として、配置予定技術者とは別に支店内で経験を有する技術者を施工検討会に参加させる体制を構築。同じく低入札価格調査を受け、ポンプ所の再構築工事を受注した別の業者は、エリアや工種に応じて統括所長を置く社内制度を通じ、会社全体で不測の事態に備えているという。
 発注者の予定価格に対し、どの程度の割合の応札額を提示するのかは各企業の自由だが、低入札価格調査の基準額を下回る落札は本来推奨されない。こうした応札があった場合、下水道局では過去の契約実績や財務状況も加味し、契約の履行に適正な技術力、経営、意欲などを備えていると判断できれば、落札者として認めている。

(日刊建設工業新聞様より引用)