国交省/米国向けインフラ輸出に本腰/160兆円市場、メンテナンスとPPPに商機

 国土交通省が米国へのインフラ輸出に本腰を入れる。トランプ政権が2月に今後10年間で1・5兆ドル(約160兆円)に上る巨額のインフラ投資計画を打ち出した中、メンテナンスとPPPに日本企業の商機があると見て、18年度から本格的な調査に乗りだす。
 「(米国には)新規インフラ投資と既設インフラの修繕に大きな需要があると理解している。日本企業の大きなビジネスチャンスになり得る」。
 1月にワシントンで米国政府と初めて共催した「日米インフラフォーラム」に出席した石井啓一国交相は、米国へのインフラ輸出に強い期待感を示した。
 フォーラムには日本から建設関係など約100社の幹部も同行。官民で経済性や耐久性に優れた日本の「質の高い」メンテナンス技術を売り込んだり、米国の関係者とPPPに関する知見を共有したりした。
 国交省が3月に初めてまとめた米国のインフラ市場動向によると、14年に公共投資額(連邦、州、地方自治体)に占める運営・維持管理費の割合は57%の2352億ドルに達した。
 米国土木学会(ASCE)が17年にまとめた米国のインフラ施設の老朽化に関する評価結果によると、16~25年の間に修繕費を中心とする4・59兆ドルのインフラ投資が必要になるとみている。ただ、実際の投資見込み額は2・5兆ドルで、半分弱の約2兆ドル分が不足すると指摘している。
 そこで国交省は1月のフォーラムでも、日本のインフラメンテナンスで推進している損傷が出る前に修繕する「予防保全」の手法を紹介。結果的に長寿命化などに有効な技術を日本から輸出し、投資額の負担軽減や平準化に貢献したい考えだ。米国政府が2月に発表した今後のインフラ投資に関するリポートでは、プロジェクトやサービスを変革できる新技術に200億ドルの投資を行う方針が明らかになっている。
 PPPへの対応も重要な課題になる。国交省によると、米国のインフラ投資計画の財源は大半を民間資金で賄うという。これまでのようにインフラ輸出で有効だった途上国・新興国向けの政府開発援助(ODA)というカードが使えない中、官民出資の海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の活用などによる、新たな資金支援策を探っていく。州ごとに異なるPPPのルールや事業の特性に応じた取り組みも必要になるという。
 国交省は16年11月に立ち上げた産学官でつくるインフラメンテナンス国民会議の枠組みを活用し、18年度から米国インフラ市場の本格的な調査に入る。調査の方法や着手時期は未定だが、より詳細で正確なメンテナンスに関するニーズ・シーズと、PPPに関するルールの把握に取り組む。
 日本の建設関連各社も米国事業の拡大へ取り組みを強化している。最近では、鹿島の北米現地法人が昨年12月、米南部で賃貸集合住宅の建設や運営などを手掛ける米国企業を買収した。太平洋セメントは米国市場の需要増加に対応し、現地での生産増強を進めている。
 国交省は「米国のインフラ市場は未知な部分が多いが、現在注力している高速鉄道に加え、道路や水資源分野などのインフラ輸出でも成果を出したい」(総合政策局海外プロジェクト推進課)と意気込む。

(日刊建設工業新聞様より引用)