対談/関東整備局長・泊宏氏×東京・葛飾区長・青木克徳氏/大規模災害にどう備える

◇関係機関連携し的確に対応/住民意識高め魅力生かした街づくり
 迫り来る巨大災害にどう備えるか-。日本が避けて通れない課題であり、特に人口と経済が集中する首都圏では対応が急がれている。30年以内に70%の確率で起きるとされる首都直下地震。地震以外にも豪雨などの災害も含め国土交通省や地方自治体、関係機関は、減災のための備えを強化している。国の立場から現場を率いる国交省関東地方整備局の泊宏局長と、地震や水害などを見据えて対応を進めている東京・葛飾区の青木克徳区長に、防災をテーマに対談してもらった。

--災害への懸念や進めている取り組みは。
 青木区長 首都直下地震の発生が言われており、地震が活発化していると認識している。地球温暖化に伴い、広域的な水害や高潮などの危険性も高まっている。災害時には、物資や避難のルートが最も大事になる。道路を確保することが大前提であり、計画中の都市計画道路をできるだけ早く整備したい。京成立石駅など駅周辺も危険度が高い。安全な街へ大きく前進させるため、再開発事業を推進していく。国や東京都と連携しながら、堤防整備にも取り組んでいる。
 泊局長 葛飾区では、特に地震と水害が懸念される。災害時には、住民の避難と被災者への救援が急務であるが、物資などの輸送ルートの確保が大きな課題となる。環状道路など道路ネットワークを整備し、リダンダンシー(多重性)を高めることが重要だ。ゼロメートル地帯であることから、荒川などの堤防が決壊した場合は、区内のほとんどが水没する可能性がある。河川の上流域ではダム、中流域では遊水池・調節池、下流域では堤防などの整備を進めている。高規格堤防は超過洪水対策であるが、避難場所や救援拠点の確保にも寄与する。

--広域災害が発生した場合に、どう動く。
 泊局長 輸送ルートを確保する上では、陸・海・空と川の4路の啓開が重要になる。道路に関しては、都心に向けて八つの方向から啓開を進める「八方向作戦(首都直下地震道路啓開計画)」を作成し、熟度を上げていく取り組みを進めている。河川では、緊急用船着き場や緊急用河川敷道路も整備している。
 青木区長 区でも災害対策本部を立ち上げて対応するが、きちんと情報を集めて発信することが一番大事だと認識している。昨年の台風21号の時は、中川の上流で氾濫危険水位に達したため、高齢者の避難を決めた。情報があれば、そうした対応ができる。区民からの情報をくみ取るような双方向の体制も整えたい。
 泊局長 国交省は、職員による緊急災害対策派遣隊(テックフォース)を組織している。東日本大震災や関東・東北豪雨の時にも、全国から現地に駆け付けて、道路啓開や排水などを行った。地方自治体に情報連絡員(リエゾン)を派遣し、円滑な情報共有を図りながら、迅速な応急復旧のための支援を行っていく。
 青木区長 水害を想定して、江東5区で広域避難推進協議会を立ち上げて議論している。この5区で人口は260万人を超えており、簡単なことではない。災害弱者の方に避難してもらうことは現実にはとても大変だ。高齢化も進んでいる。避難しなくても助かる状況も作らなければならない。

--建設産業との連携も必要となる。
 泊局長 復旧工事を行う際には、建設会社の力を借りることが不可欠となる。大手建設会社で構成する日本建設業連合会(日建連)関東支部と、国や都道府県などさまざまな機関が包括的な協定を結んだ。大規模な広域災害時には、円滑な対応が可能となる体制を構築している。
 青木区長 一生懸命取り組んでいただいていると感じた。そうしたことを区民に知らせて、連携できる体制をしっかりととっていくべきだ。区内の建設会社とも、組織的に防災協定を結んでいる。地域を知っていることは、災害時に大事な情報となる。
 泊局長 災害が起きて、不通となっている道路の復旧や、決壊した河川の堤防の緊急的な復旧に大きな力を発揮しているのは、地元の建設会社の人だ。全国規模の建設会社も、地域をよく知っている建設会社も、両方が存在していることが非常に重要だ。普段から自信と誇りを持って仕事をしいざ災害という時、役に立っていただいている。

--今後を見据えた展望を。
 青木区長 自然災害は、いつ来るか分からないということが最大の問題だ。将来世代の安全・安心を築くという認識を住民に持ってもらい、着実に街づくりを継続していかなければいけない。荒川や江戸川、中川などは、区にとって大切な資源であり、街の誇りだ。氾濫することがあるかもしれないという認識を持ちつつも、川の魅力を生かしていきたい。住民の意識を高め、防災訓練などの準備もしっかりやっていく。住民と情報を共有しながら、協働でよい街をつくっていきたい。
 泊局長 それぞれの地方自治体と普段から情報を交換するとともに、災害時には、ホットラインでトップ同士が意思疎通できる関係を築いておくことが重要だ。さまざまな機関、地方自治体、民間企業などと連携し、できる限り被害を軽減し、迅速に復旧などができるよう努力していきたい。

□整備局や日建連関東支部ら21機関が包括協定□
 関東整備局や日建連関東支部ら21機関が大規模災害に備えるため、災害応急対策と建設資材調達に関する包括協定を3月28日に結んだ。同局と関東甲信の1都8県、5政令市、水資源機構、高速道路4社という首都圏の主要行政機関が勢ぞろいしている。
 これまでは大規模災害発生時、行政機関が個々に日建連に支援を要請し、効率的な対応に支障が出る恐れがあった。包括協定によって同局が全体の調整役となり、日建連に支援を要請するという流れが出来上がった。より円滑で効果的な応急対応が可能になると期待されている。

(様より引用)