建築へ/3Mジャパンら研究会/病院健院化プロ推進、病室小規模改修で療養環境向上

 ◇足利赤十字病院(栃木県足利市)に試行導入
 長澤泰東大名誉教授やスリーエムジャパン、日本構造物維持再生技術振興支援機構らによる研究会が、病室を短期間で改修し、より良い療養環境を提供する「病院健院化プロジェクト」を進めている。病室やフロアごとに工事を行うことで、診療を継続しながらの改修を可能とし、病院側の負担軽減を目指す点が特徴。10月には、栃木県足利市の足利赤十字病院で試行導入しており、検討をさらに深化させる方針だ。(編集部・牧野洋久)
 研究会によると、築30~40年が経過した病院では、施設の老朽化が進み、病室の環境改善に対するニーズが大きいという。しかし、中小規模の病院では、多額の資金が必要となる建て替えはハードルが高いのが実情。現在地での建て替えとなれば、建設中は診療ができなくなることも問題だ。「診療を維持しながら改修できれば、中小病院も取り組みやすい」と長澤名誉教授は話す。
 足利赤十字病院は、2011年7月に移転・新築され、最新鋭の施設となっているが、長澤名誉教授が同病院の移転事業を監修した経緯から、試行プロジェクトを受け入れた。研究会は、末期がんの患者が利用する緩和ケア病棟の1室を対象に、部屋の雰囲気を変える工事を実施。従来の設備を生かしつつ内装などに手を入れ、和のイメージを感じてもらえるような色合いに切り替えた。透けて見える天井格子や、一人になって考え事ができるような半畳の個室状空間も設けた。
 テーマに掲げたのは「歌舞伎」。設計を手掛けたドムスデザイン(東京都渋谷区)の戸倉蓉子代表取締役は、「病室を、人間として最後まで演じる舞台と捉え、気持ちが明るくなるようなものを考えた」とコンセプトを説明する。
 施工に要した時間は約6時間。担当した岡田工務店(埼玉県熊谷市)の岡田建一代表取締役は、「ドアを極力閉めて、作業が中で完結するように心掛けた。汎用性のある対応は可能」とみている。
 同病院では、「より良い環境を提供するために新しいことを取り入れる」(小松本悟院長)という姿勢で病院運営に当たっている。小松本院長は、「患者さんがどのように感じられるのかが興味深い。いろいろなトライアルがあってよいのではないか」と話す。
 同病院の移転事業で設計を担当した日建設計も試行に協力。同社の近藤彰宏設計部門設計部長は「ちょっとしたリニューアルでも見違えるような空間ができる。患者目線、家族目線で考えることが大切だ」と語る。
 入院患者がより快適に過ごせる環境を構築することで、病院の利用者が増え、ひいては収入アップにつなげ、看護師といった働き手の確保にも良い循環を生み出す-。そうした流れに変えていくことが、同研究会が目指す姿だ。
 今後は、病室の個室化が大きな流れになるとみており、4人病室を区切って個室2部屋にリニューアルするような取り組みも見据えている。長澤名誉教授は、「地元の工務店でも対応できれば産業振興にもつながる。市場として大きいのではないか」と話している。
 足利赤十字病院の所在地は、栃木県足利市五十部町284の1。建物の規模は、RC・S造地下1階地上9階塔屋1階建て延べ5万1804平方メートル。病床数は555床。移転事業の設計は日建設計、施工は清水建設・渡辺建設・大協建設JVが担当した。一般病床の全室個室化を図ったほか、変化に対応するため中央診療棟や外来棟だけを増築・改修できるよう配置にも工夫している。13年に、日本医療福祉建築協会の「医療福祉建築賞」を受賞。今年4月には、国際病院設備学会が創設した「国際医療福祉建築賞」で初代の最優秀賞に選ばれた。

(日刊建設工業新聞様より引用)