東京・杉並区/静岡県南伊豆町に特養ホーム整備/町と連携、地方創生のモデルに

 東京・杉並区が静岡県南伊豆町に特別養護老人ホーム(特養ホーム)を整備した。主な利用者は区民と同町周辺の住民。自治体間の介護保険の圏域を越えた国内初の特養ホームとなる。整備用地の不足や地域経済の衰退など、都市部と地方部が抱える課題を解決するため連携した地方創生の先進事例として、注目されている。
 3月に開設した特養ホーム「エクレシア南伊豆」(加納792)の定員は90人。ショートステイ(10人)と通所介護(20人)の機能も設けた。南伊豆町が選定した民間事業者が町有地を借り、整備・運営を担う。整備費18億8000万円のうち、約6億円を杉並区が負担。区は今後も年間600万円を上限に、運営費を補助する。
 区・町連携による特養ホームの整備構想が立ち上がったのは2011年。区が同町で運営していた「区立南伊豆健康学園」の閉校に伴う跡地活用の検討の中で、現地の豊かな自然に囲まれながら療養する「保養地型特養」構想を打ち出した。だが同年に発生した東日本大震災による津波被害への危機感の高まりなどを背景に、検討は停滞した。
 事業が再び動きだしたのは13年12月。町は同学園跡地より海から離れた場所で整備を検討していた住民の検診所やコミュニティー施設といった機能を備える「健康福祉センター」と、特養ホームとの合築を区に提案。津波被害のリスクを回避できることや、各施設を利用する区民と町民の交流が深まることなどから整備を決めた。
 区が事業を推進した理由の一つは、区内での用地確保の難しさにあった。区の担当者は、「特養ホームの経営が安定する目安は定員80人以上。区内の敷地条件を考慮すると約3500平方メートルが必要だ」と話す。区は学校の統廃合で創出された区有地などを活用して特養ホームを整備しているが、用地は慢性的に不足しており土地の取得コストも膨らむ。
 一方、町は特養ホームで働く職員などの雇用創出や、利用者の家族などが町を訪れることで交流人口の増加が見込める。エクレシア南伊豆には利用者の家族が宿泊できる部屋を設置。町内観光を楽しんでもらい、地域経済の活性化につなげたい考えだ。
 事業に対しては、慣れ親しんだ地域から遠ざけるのかと批判する声もある。だがエクレシア南伊豆には50人ほどの区民が入居予定。遠方の恵まれた自然の中で療養を望む区民もいる。区の担当者は「区内での整備が基本方針」としつつも、「療養の新たな選択肢を提案し、多様化する区民のニーズに応えたい」と話している。

(日刊建設工業新聞様より引用)