東日本大震災から6年/石井啓一国交相に聞く/被災地の現状と課題は

 ◇交通・物流網構築に注力/建設業の役割継続も重要
 復興が新たなステージに入った16年度。東北の被災地では、インフラ整備や住宅建設・まちづくりが着実に進展する一方、全国では急激に伸びている観光需要の取り込みが思うように進まないなど課題も少なくない。福島第1原発事故の影響で遅れが目立つ福島の復興加速も大きな課題だ。「復興・創生期間」の2年目に向けた政府の取り組みや展望について、石井啓一国土交通相に話を聞いた。
 --被災地の現状は。
 「大臣就任以来、幾度も被災地を訪れており、復興への確かな足取りが見られる。避難者数は発災直後の約47万人から約12万人に減少した。避難所から仮設住宅や公営住宅を経て恒久住宅への移転も進んだ。仮設住宅の入居戸数は最も多かった約12万4000戸から約4万1000戸に減った。住宅再建やまちづくりは県・市町村の計画に沿って着実に進ちょくした」
 「道路、河川、下水道といった生活に密着したインフラの復旧は15年度までの集中復興期間でおおむね終了した。現在は復興道路・復興支援道路や鉄道路線の復旧など被災地の経済発展の基盤になる交通・物流網を構築する事業に力を入れている。一方、根強い風評被害の影響で、東北6県の外国人宿泊者数が全国の伸びに比べて小さく、インバウンド(訪日外国人旅行者)急増の流れから大きく遅れているなど課題も残っている」
 --17年度予算案でも、被災地の復旧・復興を第1の柱に掲げた。
 「インフラ整備、住宅再建・復興まちづくり、東北の観光振興などに取り組む。復興道路・復興支援道路は、全長550キロの約9割の区間で開通済みまたは開通見通しを公表済みで、復興・創生期間内の全線開通を目指す。鉄道は、JR山田線が18年度内の復旧、JR常磐線が19年度内の全線運行再開に向け、関係者と緊密に連携していく」
 「住宅再建・復興まちづくりは『住まいの復興工程表』に沿い、18年春までに災害公営住宅が計画の97%の約2万9000戸、民間住宅等向けの宅地が計画の90%の約1万8000戸が完成するよう事業を促進する。観光振興は、東北6県の外国人宿泊者数を20年に15年の3倍の150万人泊とする目標の達成に向け、観光資源を磨き上げ、東北のプロモーションも実施する」
 --原発事故の影響が大きい福島への対応は。
 「政府提出の福島復興再生特別措置法改正案では、帰還困難区域の復興拠点整備に関し、国によるインフラ整備の事業代行制度の創設、円滑・迅速な市街地整備の支援など国土交通分野に関連深い制度も盛り込まれた。今も多くの人が避難生活を送る福島の復興に復興庁などと連携して取り組む」
 --円滑な施工確保にも取り組んできた。
 「復旧・復興の本格化で人材や資材の需要が集中し、入札不調が一時期増加した。現場の最新状況を把握し、その都度必要な対策を講じた。適切な工期設定、復興係数の適用、公共工事設計労務単価の前倒し改定、復興JV導入、発注見通し統合・公表など多岐にわたる」
 「被災地の12市町では都市再生機構が民間の知恵や技術力を活用した復興CM(コンストラクション・マネジメント)方式による発注者支援を行うとともに、東北地方整備局が事業促進PPPを復興事業に取り入れて円滑な施工体制を確保し、早期の復興に寄与してきた」
 --各種対策で得た知見やノウハウをどう生かしていく。
 「円滑な施工体制の確保のための対策は、平時の事業にも活用できる。復興CM方式は、被災自治体や大規模工事のノウハウの少ない自治体の体制を補完できるため、本年度に設置した研究会で適用可能性などについて議論した。災害対応や復旧の迅速化には、契約までの期間が短い随意契約や指名競争方式の適切な適用も求められる。適用の考え方や発注関係事務の工夫をまとめたガイドラインを作成中だ」
 --復旧・復興に貢献した建設産業が「地域の守り手」として持続的に活動できるようにするには。
 「多くの建設会社が自らも被災していたにもかかわらず、発災直後から道路啓開作業や避難所の緊急耐震診断などを実施し、避難態勢や支援態勢の基礎を整えてくれた。昨年も熊本や鳥取で大きな地震があり、豪雨に伴う水害も各地で発生した。そうした中で建設業が役割を担い続けるための環境整備は極めて重要だ。企業が将来の見通しを持てるよう、建設投資を安定的・持続的に確保できるようにしたい」
 「生産年齢人口の減少や高齢化といった構造的課題に対し、中長期的な担い手確保・育成と生産性向上が必要だ。国交省は、技能労働者の処遇改善や休日確保などの働き方改革に取り組んでいる。施工時期の平準化や建設現場の全プロセスでICT(情報通信技術)を活用するi-Constructionもさらに進める。建設業が引き続き、国民生活の安全・安心と経済活動の基礎を支える役割を担っていけるようにしたい」。

(日刊建設工業新聞様より引用)