野村不、竹中工務店/新宿野村ビルの長周期地震動対策、9月30日完工

 ◇制振装置を共同開発
 大規模地震の発生に備え、野村不動産が東京・西新宿の超高層ビル「新宿野村ビル」(最高高さ209・9メートル)で進めていた長周期地震動対策工事が30日、完了する。竹中工務店と共同開発した制振装置「デュアルTMD-NT」を導入。地震の揺れと逆方向に「重り」がスライドする機構をビル最上部に設置し、ビルの揺れを低減する仕組みで、強風の揺れにも対応する。
 設計・施工を竹中工務店、コンストラクション・マネジメントを野村不動産がそれぞれ担当した。
 デュアルTMD-NTの技術開発を提案したのは竹中工務店。架台上に積層ゴムで支持された700トンの長方形の重りが、前後左右に揺れる力を利用し、ビルの揺れを相殺する。電源は不要。ビルが揺れれば、重りは自動でスライドする。
 野村不動産によると、長周期地震動対策に「重り」の反動を利用する技術は珍しい。他の工法に比べ、▽施工中の入居テナントへの影響が少ない▽施工後もビルの外観が変わらない▽装置の運搬が容易-などの利点があることから導入を決めた。
 事業着手は15年1月。新宿野村ビル(S一部RC・SRC造地下5階地上53階建て延べ11万8215平方メートル)の最上部南側・北側の屋内に1基ずつ設置する計画で、総工費(装置の価格含む)に約20億円を投じた。
 デュアルTMD-NTが十分な制振効果を発揮するためには、重りの前後左右への可動域を一定以上確保する必要があった。新宿野村ビルでは、最大800ミリの可動域を確保した上で、安全のため、振れ幅が650ミリに収まるよう設計。積層ゴムが大きく変形し、重りと架台との空間が狭くなった場合には、リニアスライダーと呼ぶ緩衝装置が重りのスライドを補助する対策も取り入れた。
 工事の最盛期には、昼夜合わせ100人程度の作業員が従事。菅原文明作業所長(竹中工務店東京本店)は、「テナントやビル利用者に迷惑が掛からないよう、施工の時間帯には配慮した」と話している。
 デュアルTMD-NTを設置した新宿野村ビルの制振機能について、野村不動産らは、東日本大震災や南海トラフ地震と同等レベルの長周期地震動が発生した場合、「揺れ幅は約20~25%、揺れ時間は約50%、設置前より縮減する」と試算。東日本大震災では地震の揺れ(震度5弱)が収まった後も、新宿野村ビルでは10分ほど揺れが続いたという。その時間を半分程度にできるとみている。
 超高層ビルが集積する東京都心部で、長周期地震動への対策は待ったなしの課題。野村不動産と竹中工務店は、デュアルTMD-NTの今後の展開に向け、「2社共同で特許出願の手続きに入っている。2020年には特許を取得できる見通しだ」としている。

(日刊建設工業新聞様より引用)