2018新年号/国交省・毛利信二事務次官に聞く/国土交通行政や産業政策の方向性は

 ◇「人」に焦点当て改革実行
 国土交通省が、働き方の改善と生産性の向上を柱にさまざまな施策を打ち出している。建設業の働き方改革や担い手確保・育成といった建設産業の人づくり革命を強力に推進。建設現場の生産性向上策「i-Construction」をはじめとする生産性革命プロジェクトのさらなる具体化に精力的かつ迅速に取り組んでいく方針だ。2018年の国土交通行政や建設産業政策について、毛利信二事務次官に話を聞いた。
 社会資本整備や公共交通といった国民の社会・経済活動を支えるインフラを広く所管する立場として、引き続き期待される役割を果たしていかなければならない。社会資本は生産性の向上や民間投資の促進といったストック効果を通じて日本の経済成長に大きく貢献する。頻発する多様な災害などから国民の生命と財産を守ることも、社会資本が果たすべき最重要の使命であり、地域の安全・安心な生活や経済活動の前提となる。
 □iーCon加速へ先進技術総動員□
 こうした観点から、社会資本の整備では「生産性向上」や「安全・安心の確保」などストック効果が最大限発揮されることが必要だ。3大都市圏環状道路などへの重点投資の加速や、地域産業の生産性向上に直結するインフラを全国で重点的に整備する。整備効率を高めるため、i-Constructionの加速による建設現場の生産性向上や、建設分野などの人づくり革命と働き方改革を進めるとともに、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)などの先進技術も総動員する。
 社会資本整備を着実に進めるために、安定的・持続的な公共投資の確保にも努める。毎年度の当初予算の公共事業関係費には非常に強いメッセージ性がある。少しだが右肩上がりにある流れを変えてはいけない。
 □働き続けることが当たり前の職場に□
 建設業は「人に支えられ、現場で成り立つ産業」であり、より魅力ある産業になるためにも「人」に焦点を当てた働き方改革や担い手確保・育成の取り組みが非常に重要だ。建設の仕事は、ものを形にして作り、それが目に見える。一人ではなく多くの人たちと時間をかけて作る産業は他になかなかない。さらには災害対応や除雪など、いざ困った時に役に立つ。こうした魅力や面白さに気付いた若い人や女性が今、建設業に目を向け始めてくれている。これは貴重なことで、大事にしたい。最近、若い人の入職が少し増えてきているが、女性も含め若い人が安心して入職でき、働き続けられるのが当たり前の職場にしていかなければいけない。
 発注者の理解を得て実効性ある働き方改革を進めるため、関係省庁と連携して「適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定した。これに沿った取り組みの浸透を図るため、民間発注工事の鉄道や不動産・住宅、電力など分野別の連絡会議などを活用して理解と協力を働き掛けていく。何より、現場の働き方が変わったことが実感できるようになるまで、この取り組みを続けなければならない。
 社会保険の加入徹底や適切な賃金水準の確保などの取り組みも引き続き推進すると同時に、「建設キャリアアップシステム」の構築と活用、最新の技術・技能を習得する「建設リカレント教育」の推進などにも取り組んでいきたい。
 □人材投資と処遇改善の好循環を□
 今年秋には建設キャリアアップシステムの運用開始が予定されている。システム導入を一人一人の技能者の処遇改善につなげていくことが重要だ。国交省ではシステムを活用した技能者の能力評価のあり方と、専門工事企業の施工能力の見える化について検討を進め、夏ごろには制度の枠組みを提示したい。優秀な職人を抱え、育てる企業が選ばれる環境が整備されることで、建設業界に人材投資や処遇改善の好循環が生み出されると考えている。
 システムを建設産業のインフラとして使ってほしい。現場管理の効率化や書類作成の負担軽減の促進といった効果に加え、技能者一人一人の経験や技能を大切に守り、評価し、磨き育てて生産性の高い人材へと着実にキャリアアップさせる。それが建設業全体の生産性の向上にも大きく貢献していくことになる。
 官民一体となってシステムの構築を進めており、普及にも業界の理解と協力が不可欠となる。建設産業の持続的な発展のため、それぞれの立場から普及・利用促進に向けた取り組みを積極的に展開していただきたい。国交省も運営主体の建設業振興基金と連携し、システムの幅広い普及と浸透に向けてしっかりと取り組む。
 地域の中小・中堅建設企業は、インフラの整備、維持管理、災害対応などを担う「地域の守り手」であり、都市再生など活力ある未来を築く上で大きな役割を果たしている。中長期的に高齢者の大量離職が見込まれる中、今後も経済成長に必要な供給力を維持するには、中小・中堅建設企業の生産性革命が喫緊の課題だ。
 昨年はi-Constructionの取り組みの2年目として、ICT(情報通信技術)土工を着実に進めるとともに、ICTを活用する工種の拡大、産学官連携のコンソーシアムなどを通じた技術開発や導入促進などに取り組んできた。i-Constructionのさらなる推進に向け、中小・中堅建設企業の取り組みを加速するための支援を充実させる。中小・中堅企業にとっては負担が大きいICTの導入や人材育成などに対する支援を行い、ICT施工を実施しやすい環境整備を進める。
 建設現場で直接施工に携わる従事者一人一人の生産性を高めることも重要だ。地域や業界、教育訓練機関などが連携し、従事者に必要とされる技能の習得をICTなどを活用して効果的・効率的に行う建設リカレント教育の推進に積極的に取り組む。これらを業界団体などと連携して行い、地域を支える中小・中堅建設企業の生産性向上を強力に進めていきたい。
 □制度改正含め提言具体化へ□
 建設産業政策会議で、10年後も建設産業が「生産性」を高めながら「現場力」を維持できるよう建設業関連制度の基本的な枠組みを議論し、昨年7月に「建設産業政策2017+10」がまとまった。国交省では提言を踏まえ、スピード感を持って施策を具体化していきたい。第1弾として7月に中央建設業審議会を開き、社会保険加入促進に向けた経営事項審査や標準請負契約約款の改正などを議論し、承認をいただいた。
 提言内容を具体化するため、専門工事企業の評価制度の構築や多能工化への支援、建設リカレント教育の推進などが18年度当初予算案または17年度補正予算案に盛り込まれた。今後も必要な制度改正を含め、提言いただいた施策の実現・具体化に向けて着実に準備を進めていきたい。

(日刊建設工業新聞様より引用)