JICA/円借款案件の紛争裁定委活用促進/実態調査し運用方針改善へ

 国際協力機構(JICA)は、円借款案件の大型工事などで契約上の紛争予防・解決の有効手段と位置付けている「紛争裁定委員会(Dispute Board=DB)」の活用促進に本腰を入れる。工事の発注主体である現地の実施機関や日本の元請企業などに調査・ヒアリングを行い、DB普及の阻害要因の特定を進める。実態を踏まえ、DB設置の運用方針の改善や理解促進策などを検討する。
 JICAの調達ガイドラインでは、円借款事業で現地の実施機関と資機材・役務の提供者に紛争が起こることを想定し、適切な予防・解決策を両者の契約書で規定するよう明示している。13年3月に示したJICAの内部方針「円借款事業におけるDB設置にかかる具体的運用方針」には、50億円以上の規模の土木工事を伴う契約事案を対象に、審査時までに実施機関の合意を取り付けられることを条件に、DB設置を求めている。
 DB設置を推奨する一方で、JICAには在外事務所などを通して「円借款事業の案件審査で実施機関とDB設置の合意が得られなかった」「審査時にDB設置が合意されたが、設置に至らない」といった実態が数多く報告されている。
 こうした背景を踏まえ、JICAはDB設置の運用方針のレビューと併せ、実施機関や元請企業などへのアンケートやヒアリングによる実態把握・分析を進め、DBの設置促進と普及環境の改善の取り組みを強化することにした。現在、関連調査業務の発注手続きを進めている。
 調査では、DBの普及・研究を進める世界的な非営利団体(DRBF)のデータベースなどを参照し、インフラ事業でのDBの設置件数や契約金額、紛争解決の実績などDBの活用状況を整理。世界銀行など国際開発金融機関側のDB設置の関連制度と比較しながら、円借款案件での運用上の課題を探る。
 円借款事業でDB設置が義務化されている50億円以上の土木工事を伴う調達パッケージのうち、12年度以降で調達書類チェックを行った129件の契約を対象に、DB設置状況などを確認する基本調査を先行して実施。その結果を基に、設置されるDBの形態(常設の可否、メンバー数)や契約金額の傾向、入札時と契約締結時のDBに関する契約条件の比較・分析などを行う。
 基本調査の対象事業の実施機関(約80者)と、同事業を請け負った日本企業へのアンケート結果を踏まえ、DB設置に対する双方の認識・意見の違いなどを調べる。
 一連の調査結果を踏まえ、代表的な事案を5、6件程度選定し、DBメンバーの選出過程や活動内容、裁定の経緯・結果など各項目のケーススタディーを行う。
 DRBF所属の紛争調停者など国際的プロジェクトの紛争解決に関わる複数の有識者から、調査・分析結果の妥当性の確認協力やDB普及の助言を得る。海外建設協会にもヒアリングを実施し、業界団体として円借款案件のDB設置への現状認識と意見を求める。
 DBの普及と有効活用に向けた制度改善、DBへの理解促進策などについて、JICA、現地の実施機関、請負企業向けにそれぞれ打ち出す。調査結果と成果については5月下旬に東京で開催予定のDRBFの年次総会の中で報告する。

(日刊建設工業新聞様より引用)