2017年春の叙勲受章者に聞く/旭日小綬章/向井建設代表取締役会長・向井敏雄氏

 ◇現場の職人にもっと光当てたい
 今回、叙勲の栄に浴したのは、団体の各種活動の成果に対して、長として取り組んできた私が代表して頂いたものだと受け止めている。日本機械土工協会は日本の社会資本整備に貢献し、東日本大震災をはじめとする震災や天災などに最前線で対応してきた。建設産業専門団体関東地区連合会では担い手確保に向けた活動を展開してきた。
 若い頃から、政府の各種委員会で委員をさせていただいた。その中で最も重視してきたのが、技能労働者の地位向上と処遇の改善だ。建設産業のビジョンづくりの議論では、職人にもっと光を当ててほしい、そして当時の建設大臣(現国土交通大臣)から直接表彰されるようにしてほしいと訴え、「建設マスター」制度を創設いただいた。そして、技能者と技術者のはざまを埋めるような卓越した技能者がものづくりの現場に必要になるとして、今の登録基幹技能者制度ができてきた。富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)の設立にも携わらせていただいた。
 日本はものづくりで発展してきた国で、職人文化があった。ホワイトカラーという言葉が生まれた頃から職人を軽んじる傾向が出てきた。職人を大切にしない国は滅びる。ゼネコンにはもっと職人を大事に育てることを意識してほしいと思っている。金銭的にしっかりとした処遇を得られることが重要だろう。
 その意味で、来年秋にも稼働する「建設キャリアアップシステム」は、職人を人間として見る仕組みだと思っている。これまで「現場に何人手配する」と数だけで論じられてきたものが、現場の特性に応じた適材適所の配置が行えるようになる。ようやく、数から個人に重きを置く時代になると期待している。
 社業を振り返れば、あり過ぎるぐらい、いろいろな事があったが、何と言っても印象深いのは、今も進行中の東日本大震災への対応だ。福島第1原子力発電所の事故現場に当社は真っ先に駆け付け、建屋周辺のがれきの片付けを行った。元請のゼネコンからの要請は一件も断らないことにした。断った分だけ、復旧・復興が遅れるからだ。そして便乗値上げをすることなく取り組むことにした。終始一貫、価値観を共有して一枚岩で対応してきたのは向井建設の誇りだと思う。防潮堤、凍土壁など特に沿岸部への対応は相当やらせていただいた。
 大成建設による横浜ランドマークタワー(1993年竣工)の施工に携わることができたことも思い出深い。それまで関東では超大手の仕事をしてこなかったが、これをきっかけに5社の仕事をさせてもらえるようになった。袖振り合うも多生の縁と言うが、一期一会を大事に取り組んできたことは、本当によかった。
 叙勲受章に終わることなく、今後も技能労働者に光が当たるようにしたい。産官学挙げて担い手確保・育成を目指しているが、建設産業のイメージをがらっと変えるぐらいの取り組みをしながら、人を大切に、そして生き生きと働ける環境をつくっていきたい。向井建設もこれまで以上に人材に投資していく。
 =おわり

(様より引用)