2017年春の叙勲受章者に聞く/旭日重光章/錢高組代表取締役会長・錢高一善氏

 ◇目線合わせた双方向の対話へ
 祖父、父に続いて受章させていただけたのは大変に幸せであり、皆さまのおかげだと心から感謝している。
 全国建設業協会(全建)の会長に選んでいただいたのは1996年で、52歳の時だった。企業経営とは違い、建設業界全体のために汗をかく組織の長として、企業規模に関係なく、全国の方々の多様な考え方や価値観・歴史観を大切にしながらやらせていただいた。
 就任当時はまだ、正直に言って(官民の関係に)縦縛りの雰囲気があった。各地で開く地域懇談会でも、許認可・監督権限と発注権限の双方を担っておられる建設省(現国土交通省)に対し、建設業界はどこか気兼ねしながら話をしているとの印象を受けた。
 税金を投じる公共事業で造られる社会資本のエンドユーザーは国民、県民、市民であり、インフラを利用されるそうした一般の方々のために、建設業界は発注者のパートナーとしてやらせていただきたい。そんな思いを強くした私は、懇談会で「ご当局と双方向での対話をさせていただきたい」とお願いした。当時としてはかなり大胆な言い方であったかもしれない。しかし、1年ほどたったころか、そうした対話をしてもかみ合っていない部分もあると感じ、「目線を合わせた双方向の対話を」と言い換えてお願いさせていただいた。後に、こうは申し上げたもののまだまだ双方向ではない環境があると感じたため、「分かり合える関係になりたいと思ってきましたが、お互いの立ち位置が違うなら分かり合えない部分もあるということを分かり合う努力をしつつ話し合いをしなくてはいけないと思っています」とお願いさせていただいた。
 先人から受け継ぎ、多くの方々の協力と支えを頂きながら、全建会長を務めた6年間はいろいろと辛口の発言もしながら「闘ってきた」というのが本音だ。きつい風当たりもあったかもしれないが、自分が置かれた立場の責任を果たすため、一生懸命にやらせていただいた。
 1999年からは建設業労働災害防止協会(建災防)会長も務めている。安全という一つの目的に向かって、建設業だけでなく様々な業種の専門工事業の全国の団体の皆さんと一緒の円卓テーブルで議論して取り組んでいるのが建災防の特徴で、毎年行われる厚生労働省と国土交通省同席のもとの意見交換会や、建災防内の特別委員会にも厚労省の幹部に委員として参加いただいている。目線を合わせた双方向性のフラットな対話-。これを建災防ではご理解のもとしっかり実現できている。
 現在、建設業団体の会長を務めておられる方々も自社の損得ではなく、業界全体のために努力をされている。これまでの団体活動で私は一つの歯車かもしれないが、先人の方々から学び、教わり、感謝しながら、強い信念を持ってやってきた。分かっていただける人、いただけない人もおられるだろうが、やってきたことを少しでも後輩に引き継いでいってもらえたらありがたいと思う。
 (随時掲載します)

(様より引用)